スマートキーとはグリップ式のほうが相性がいい
かつて国産車の多くはフラップ式のドアハンドルを採用していた。下から指をさし入れて板状のハンドルを引き上げることでドアを開ける方式がスタンダードだった。たとえば、1990年代中盤以降、国民車といえるほど人気を集めたスズキ・ワゴンRを例にあげると、初代から3代目までは、このフラップ式ドアハンドルを採用している。
しかし、2008年にフルモデルチェンジした4代目からは、棒状のグリップを引っ張ってドアを開ける「グリップ式ドアハンドル」に変わっている。かつては高級車だけの装備と思われていたグリップ式ドアハンドルが大衆的な軽自動車にも採用されたという点で、ワゴンRの変化はインパクトがあった。
では、グリップ式ドアハンドルのメリットとは何であろうか。その点について一家言あるメーカーといえばフォルクスワーゲンだろう。初代ビートルから現代にいたるまですべてのラインアップがグリップ式ドアハンドルというのは同社の伝統だ。その理由はユニバーサルデザインであること。グリップ式であれば、ハンドルの上からでも下からでも、手を差し入れることができる。フラップ式では指先に力を入れる必要があるが、グリップ式は手でしっかりと掴みやすく、力が入れやすい。平均的な成人であれば、フラップ式とグリップ式で力の入れ具合の違いを感じることは少ないかもしれないが、握力の弱い人や子どもなどでは差が出てくるという。また、爪を伸ばしていたりするとフラップ式は扱いづらいが、グリップ式であれば握りやすい。厳寒地などで厚い手袋をしたままでも操作しやすいのだという。
そして、国産車にもグリップ式ドアハンドルが普及してきた理由は、スマートキーとの相性の良さだろう。スマートキーを持っているとドアハンドルを握るだけでドアロックが解除できるというのは、クルマに乗り込むときのシークエンスとして、もはや当たり前になっているドライバーも多いだろう。
こうしたスマートキー用アンテナとセンサーを内蔵したドアハンドルを考えると、バータイプのほうがデザイン的に有利である。フラップ式でスマートキーに対応することも可能だが、その場合は別途スイッチを置くことになりがちだ。こうしたことから、スマートキーの拡大とともに、大衆車までグリップ式ドアハンドルを採用するようになったといえる。