ワイド&ローを実現したスポーティなエクステリア
2016年に登場のXC90を皮切りに新パワートレイン(Drive-E)と新プラットフォーム(SPA/CMA)、北欧を強調した内外装デザインを全面採用した「新世代ボルボ」が高い評価を受け、世界の累計販売台数/日本の年間販売台数も右肩上がりの状況だ。
そんなボルボのラインアップでクロスオーバーSUVと並ぶ“柱”のひとつがステーションワゴンだ。過去のモデルを振り返ると、240、740、850、V70と頭の中に浮かぶのはステーションワゴンの姿が多い。
そんなステーションワゴンシリーズの中堅を担うV60が2代目へとフルモデルチェンジ。ただ、単なる世代交代とはちょっと違い、スポーツツアラーだった「初代V60」のスポーティな走りと、ステーションワゴンの王道であった「V70」のユーティリティを融合させたモデルという位置づけだ。
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エクステリアは次世代ボルボ共通のデザインアイコンやフロントホイール to Aピラーの黄金比を用いるが、エレガントさを重視したV90に対し、スポーティで実用性を重視したデザインだ。パッと見、大柄なサイズに見えるが、実際にボディサイズは全長4760×全幅1850×全高1435mmと先代に対して全長は+125mmだが、全幅はマイナス15mm、全高はマイナス45mm。世代交代で肥大化するモデルが多いが、サイズダウンは大きく評価したいポイントのひとつだ。ちなみに全幅1850mmは日本市場からの強いリクエストにより実現したとも言われている。
インテリアはセンターの大型ディスプレイが特長となる次世代ボルボ共通レイアウトを採用、基本はXC60と同じだが全高の低いステーションワゴンに合わせてバランスを調整。
ホイールベースは先代+95mmの2870mmだが、その多くを後席のレッグスペース拡大に用いている。ラゲッジスペースは角度を立てたリヤゲートまわりのデザインも相まって先代(430L)より大幅アップしV70にも匹敵する529Lを確保する。
パワートレインはDrive-Eシリーズの2Lガソリンターボ(T5)と出力違いの2Lガソリンターボ+スーパーチャージャー+モーターのプラグインハイブリッド(T6/T8・2019年3月より納車予定)の3タイプを設定。トランスミッションは全車8速ATだ。
シャシーは次世代シャシーのSPAだが、日本仕様は全車ダイナミックシャシーを採用。サスペンションは全車コンベンショナルなスプリング仕様のみでエアサス仕様の設定はないが、オプションで電子制御ダンパー「FOUR-C」をセレクト可能。タイヤはエントリーのT5モメンタムのみ225/50R17、それ以外のモデルは235/45R18。さらにオプションで19/20インチも装着可能となっている。
スポーティさも感じさせるほど走りの良さを体感
今回試乗したのはT5の豪華仕様「インスクリプション」の標準仕様(18インチ+コンベンショナルスプリング)とOPの19インチ+FOUR-C仕様の2タイプだ。標準仕様は心地よいダルさを備えながらも芯があり滑らかなステア系と素直で安心感のある挙動、剛性感が高いボディなどは新世代ボルボ共通だが、操作に対するクルマの動きはレスポンスがいい上に軽快で、初期ロールを抑えたフットワークは明確にスポーティさをアピールした味つけである。恐らく、新世代ボルボの中で「走りの一体感」がもっとも高い。ワインディング“も”走れるではなく、ワインディング“を”走れるボルボというハンドリングが備えられている。
それでいながら快適性は一切犠牲になっておらず、しなやかな足さばきや凹凸を超える際のアタリの柔らかさ、目線がブレないフラット感などはエアサス仕様のV90を凌ぐ部分もあったほどだ。これはSPAの熟成に加えて、新世代ボルボにしては小径(!?)のタイヤサイズも効いているはずだ。つまり、新型V60のフットワーク系は、先代V60とV70の良かった部分をより高い次元に引き上げてバランスさせたのだろう。
2Lガソリンターボは数値以上に感じる実用トルクの太さとターボラグを感じさせない滑らかさ、そして十分以上のパフォーマンスはV90の同エンジン車で感じた印象と大きく変わらない。
ただ、V90ではゆったりかつ重厚なフットワークに対してエンジンのフィーリングやサウンドが軽快すぎて、クルマとしてのバランスはディーゼル推しだったが、新型V60はエンジンフィールとフットワークのバランスが合っている。じつは筆者は試乗するまで「新型V60にディーゼルの設定がないのが残念」と思っていたが、試乗後は「ディーゼルがなくて正解だね」と思ったほどだ。
ちなみに19インチ+FOUR-C仕様は、よりダイレクト感が増したステアフィールとより無駄な動きを抑えたフットワークで、先代V60にラインアップされていたスペシャルバージョン「ポールスター」を思い出すような精緻でコントロール性の高いハンドリングと「ノーマルよりちょっと硬めかな?」という程度の快適性を備える。このフットワークだはパワートレインはちょっと物足さを感じてしまうので、「ポールスター・パフォーマンス・ソフトウェア」をプラスするといいかも!?
ちなみにさまざまなシステムにより360度をカバーする鉄壁の先進安全・運転支援機能は全車標準装備だが、新たに衝突回避・軽減フルオートブレーキシステムのCity Saftyに「対向車対応機能」をプラス。また、兄貴分譲りのベンチレーション&マッサージ機能付フロントシート(インスクリプションに標準)や、カーオーディオでは最高峰の音質を誇る「Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドシステム」もOP設定される。
このように新型V60は、見た目も走りも「小さなV90」ではなく独自の世界感を備えたモデルなのはもちろん、新しいのにどこか850や歴代V70といった旧世代ボルボのテイストが薄ら残っている一台に仕上がっている。
ジャーマン3からの乗り換えはもちろん、日本でも扱いやすいボディサイズや輸入車唯一の「5年保証」やアクティブローンやスマボなど、ニーズに合わせたさまざまなファイナンスプログラムも用意されているので、「日本車にいいステーションワゴンがない」と嘆くあなたにもぜひお勧めしたい一台である。