歴史に名を残す名車だがじつは操りにくいモデルも……
3)エンツオ・フェラーリ
フェラーリ創設者のエンツオ・フェラーリの名を冠した歴史に残る名車としてエンツオ・フェラーリは知られている。だがその操縦性は極めて難しく、乗りにくいクルマだった。6リッターV型12気筒660馬力の自然吸気エンジンをミッドシップにマウント。後輪2輪駆動でカーボンモノコックボディを採用するなど、ディテールは前出2台と似通っている。そしてハンドリングもまた前出2台と同じ特性で問題点は共通している。
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シャシー性能、エンジンパフォーマンスに対してタイヤ性能が不足していてバランスが悪い。当時としては画期的なランフラットタイヤを日本のブリヂストンが専用に作り納入していた。ランフラットである以外にも高速走行時の騒音や摩耗、ウエット性能など欧州の厳しい性能要求をクリアしなければならない。そのためグリップや操縦安定性にはプライオリティが置かれなかったと読んでいる。
トラクションコントロールやABSの制御が緻密化され市販に耐える常用域を獲得したことで、モンスターカーが市販される環境が構築されたのだが、サーキットでの限界特性をきちっと造り込むことはなかった。それどころか今回取り上げた3車はスリックタイヤなど純正指定外のタイヤを装着しただけで保証の対象外とされるなど、高性能車としては理不尽な販売方法が適用されていたのだから。
このように今回紹介した3車は名前だけ聞けば人々の垂涎の的となる名車であったが、実際のところプロドライバーであってもサーキットで扱い切れないアンバランスな走りであった事実は、多くが明かされることのないまま歴史に埋もれていっている。