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車種によってバラバラ! パドルシフトはステアリングかコラムかドチラに設置が正解?

車種によってバラバラ! パドルシフトはステアリングかコラムかドチラに設置が正解?

もともとレーシングカーから派生した技術

 よく話題になるのがパドルシフトに位置。ステアリングスポークにあるのがいいのか、ステアリングコラムにある方がいいのか、といった問題。

 ツインクラッチ(DCT)の普及に伴いマニュアルシフトも可能とするパドルシフターが採用されるようになったのだが、車種やメーカーにより設置場所が異なっているから面白い。近年はトルコンAT車のマニュアル操作にもパドルシフトが用いられるようになってきていて大きく広がってきているが、操作方法についてほとんど議論されていなかったようにも感じる。

 そもそもパドルシフトはモータースポーツの世界で生み出された技術で、素早く確実にシフト操作することが目的だった。レーシングカーのマニュアルトランスミッションの変遷を見ると、始めはHパターンで操作するものがほとんど。シーケンシャル方式のトランスミッションが出来ると前後に操作するだけでシフトできるIパターンのシフトが生まれ操作性が大幅に向上する。

 僕がF3000やグループCのレーシングマシンに乗っていた頃は、短いシフトレバーのHパターン5速。クラッチを切ってもドグクラッチは、ギヤをエンゲージした時にダイレクトに衝撃が伝わり手や腕の関節を痛めた。シフトレバーは固く操作も重い。毎レース毎にレーシンググローブに穴が空き、手にはマメができていた。対策としてシフトレバーをゴムで巻き、レーシンググローブの下に自転車競技用のショートグローブをして手を保護していたくらいだ。

 だからIパターンのシーケンシャルが登場して時は本当に有り難かった。シーケンシャルになってシフトリンケージを前後に動かすだけの単純な構造になると、操作自体をアクチュエーターに行わせることができるようになり、シフトレバーはアクチュエータースイッチとしての役割となる。その結果パドル方式が生まれドライバーはステアリングから手を離すことなくシフト操作が出来るようになるわけだ。

 パドルシフトが登場する以前はHパターンにしろIパターンにしろシフト操作時に片手運転を強いられていた訳だから、大きなGがかかるレースシーンでは大変だったのだ。パドルシフトが採用されるようになってドライバーはステアリングに集中でき、ラップタイムを各サーキットで2秒ほども短縮させることが可能となるなど大きなメリットをもたらした。

ステアリングを持ち替えないフォーミュラなどはステアリング式

 ではレーシングカーで採用されているパドルシフターはどこに装着されているかというと、ステアリングスポークである。F1をはじめフォーミュラカーは完全にステアリングスポークに備えられている。しかし、ツーリングカーやラリー車になるとステアリングスポーク式よりステアリングコラム装着方式のほうが多く主流となっている。

 両者の違いはどこにあるかというと、それはステアリングの操舵量にあるのだ。スリックタイヤを履くフォーミュラカーは、ステアリングギヤ比もクイックで、操舵量は最大でもステアリングアングルで左右180°程度だ。ステアリングを持ち替えることなく最大操作角まで操舵できる。たとえヘアピンコーナーでもハンドルを持ち替えて回す必要がない。したがってステアリングスポークにパドルを備えることがもっとも操作性が高いというわけ。

 ツーリングカーやラリー車はどうかというと、スーパーGTマシンのような本格的レース仕様はフォーミュラカーに通じるが、S耐(スーパー耐久)など市販車ベースのツーリングカーではステアリング操作量がロックtoロックで2回転前後あり、最大操作量ではステアリングを持ち替える必要がある。

 ステアリングをグルグル回すのだからスポークにパドルが付いていると180°で左/右(アップ/ダウン)が逆転し、さらに回すとまた逆転する。左右に激しく操舵するラリーやジムカーナ、ドリフト走行などではステアリングスポーク付きパドルでは操作し辛くなってしまう。そこでステアリングコラムにパドルを固定し、どんなにステアリングを操舵しても右/シフトアップ、左/シフトダウンに固定して操作の混乱を回避しているのである。このステアリングコラム付きパドルシフトを正しく操作するためにドライバーは送りハンドル操作を求められるのだ。

市販車の場合は特許が絡んで複雑化している

 ここで市販車の実際を見てみると、ほとんどの車種がフォーミュラカーのステアリングスポーク式を採用している。大転舵では操作しにくい方式ながらコスト的なメリットとフォーミュラカーのイメージとして採用しているわけだ。国産で例外なのは三菱車くらい。これは僕が進言したからだ。

 欧州車ではメルセデスやBMW、ポルシェもステアリングスポーク式を採用しているが、フェラーリやランボルギーニ、マセラッティなどイタリアンスポーツのほとんど、そして英国・アストンマーティンもステアリングコラム式を採用する。

 じつはイタリアの電装品メーカーで、フェラーリなどにアクチュエーターなどを納品しているマレリー社がコラム式パドルの特許を持っていて、ドイツ車は特許回避のためステアリングスポーク式を採用したという説もある。

 三菱は操作性の真実を求め特許使用権を得てアストンマーティン社製のマグネシウム軽合金製パドルをランエボXやアウトランダーで採用していた。

 ということでパドルシフトはステアリングスポーク式かステアリングコラム式どちらがいいのかは車種、使用環境により異なり、一番にはステアリング操舵角によって適性がわけられることを理解できれば答えは明らかだろう。

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