情報の充実だけでなくコスト面のメリットもあるが……
高速道路料金所をノンストップで通行できるETCは、利用する曜日や時間帯による通行料金の割引、都市高速や東京外環道などの有料道路での距離制料金の適用といったメリットもあり、今ではクルマには必需品となっている。そんななか、ここ2年ほどで通常のETCの進化版的な存在となるETC2.0というものも出回り始めた。
ETC2.0はITS(高度道路交通システム)の道路側のアンテナとなるETCスポットとの通信によりETCを利用した機能を拡張させたものだ。通常のETCに対し加わる機能を挙げてみよう。
1)情報提供サービス
ETC2.0車載機とETC2.0対応のカーナビやスマートフォンとの接続により、ITSスポットからの急カーブや滑りやすい路面などの事前注意喚起。地震発生時などの災害時支援。
2)渋滞回避支援
ITSスポットから最大1000km分の道路交通情報が提供されることを生かした、ETC2.0対応のカーナビとの接続のよる「遠回りだけど到着は早い」といった臨機応変なルート案内。
3)料金そのままでの同一インターからの一時退出、再進入が可能
まだ全国展開はされていないが、対象となるインターチェンジ、インターチェンジ近くの道の駅の利用のため、1時間以内であれば高速道路を一度出た際に掛かる初乗り料金なしで一時退出、再進入できる。
4)コインパーキングやフェリー乗船といった料金支払いの際の無線通行
ただし現在対応しているのは僅かなスポットで、ETCクレジットカードとは別のクレジットカードが必要となる上に利用開始のための手続きも必要になる。
5)圏央道(首都圏中央道路)の約二割引きとなる料金適応
これらの5つが挙げられる。さらに今後ETC2.0使用車に対し導入が予定されているサービスは以下のとおりだ。
A)渋滞、事故、給油のため高速道路を一時退出、再進入した際に、初乗り料金なしでストレートで走行した場合と同じ料金の適応。
B)同じ目的地に行く場合に渋滞回避のため「空いているけど遠回りかつ料金がかさむルート」を走った場合に料金が割引になるサービス
この2つが計画されている。
しかし将来的に導入されるものも含め、ETC2.0を導入するメリットを客観的に考えてみると
1)は確かに有用ではある。
2)も有難いが、スマートフォンなどで渋滞情報を確認してルートを考えれば済む感は否めない。
3)とA)で一度高速道路を一時退出、再進入した場合に初乗り料金が掛からないのはいいが、初乗り料金が少額なのも事実。
4)は普及すれば有難いが、民間企業との連携が必要になることもあり、普及の時期は未知数。
と、現状ではETC2.0は価格が通常のETCに対し1万円は高いこともあり、圏央道を頻繁に利用する人以外は高い分のモトを取れないため、メリットが少ないというのが率直な印象だ。そのため現時点でETC2.0を導入する必要性は非常に低く、今使っている「ETCが故障した」、「クルマを買い替える」といった機会に”ETC2.0の価格に納得できれば付けてもいい”というのが実情だ。
ETC2.0もせっかく作ったものなので普及しないと意味がないだけに、ETC割引のように”ユーザーが導入したくなる魅力”をもっと盛り込み、普及が進むことを望みたいところだ。