欧州では馬鹿売れするハッチバックが日本で不人気の理由

かつて日本でもハッチバックは人気を博していた

 欧州では、スポーツハッチバックが人気だ。ルノー・メガーヌやフォード・フォーカスなど、スポーツハッチは幅広い年齢層に売れている。人気の背景にあるのが、少し前まで人気の高かった3ドアハッチバックだ。

 2ドアクーペの流れを汲み、そこに後席の居住性と荷室を確保したのが、3ドアハッチが生まれた背景。その商品性とイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインという欧州主要国のクルマに対する趣向性が合致した結果だ。

 日本でも80年代には3ドアスポーツハッチが次々登場。日産・パルサー、トヨタ・スターレット、カローラII、三菱・ミラージュ、そして赤いマツダ・ファミリアの大ブームが起こったことを覚えている方も多いだろう。

 だが、日本ではその後、乗用車の主力モデルがミニバンに移行し、クルマの商品性として乗員数の増加と居住性の確保の両立を求められるようになった。その結果として、ドアの数が少なく、リヤシートの居住性が低い3ドアハッチバックは急速に市場から消えていった。

欧州でも5ドアハッチへ市場のニーズが変化

 そうした90年代から2000年代にかけてでも、欧州では3ドアハッチバックの人気が継続していた。日系メーカーでも、欧州向けとして三菱「コルト」など3ドアハッチバックの生産を行っていた。

 ところが2000年代後半になると、欧州でも3ドアハッチの人気が落ちていった。その理由は、クルマのコモディティ化である。コモディティとは、「実用的な道具」を意味する。クルマ好きが未だに多い欧州でも、クルマに対してデザインのカッコ良さではなく、実用性を重視する動きが一気に加速しているのだ。

 こうした中、トヨタが欧州向けに生産していた「オーリス」が2018年3月のスイス・ジュネーブショーでフルモデルチェンジをした。欧州でのライバルたちの最新デザインや最新機能を見据えた上で、トヨタの真骨頂であるハイブリッドユニットを搭載した。

 この流れを汲むのが、日本での「カローラスポーツ」だ。2018年6月、事実上の発表記者会見となった「ザ・コネクテッドデー」は、トヨタの最上級車種「クラウン」と一緒に、しかも一般から公募したお客さまに対して豊田章男社長が自らプレゼンするという異例中の異例の出来事だった。

 欧州での3ドアから5ドアへのハッチバック市場の移行に伴い、日本でも5ドアハッチバックの新たなる風が吹き始めそうだ。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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