日本の匠の技を結集! トヨタ・センチュリーに採用したメカニズムをチェック (3/4ページ)

細部にまで貫かれた配慮と高品質なモノづくりのこだわり

 センチュリーは、後席に乗るエクゼクティブやVIPに最上級の移動空間を提供する少量生産のショーファードリブンとして、ほかの量産車とは異なる構造を採用。生産技術でも専用設備が導入され、熟練した匠の手作業によって、ひとつひとつのパーツが特別な基準で作られている。

 とくに後席への乗降性を高めるために、リヤドア開口部の下辺とフロアの段差をなくしてフラットにする、「徐変ロッカー断面」構造を採用。

 徐変とは徐々に変化させるという意味で、前席のロッカー高さをBピラー根本で徐々に下げ、後席側開口部を一段下げた形状にしている。この構造自体は先代でも採用されていたが、新型では完全にフラット化して、乗降時の足の出し入れをしやすくしている。さらに、ロッカーパネルをドア面より内側にオフセットさせることで汚れが付着しにくくなり、スーツはもちろん和装の女性でも気兼ねなく乗り降りできるよう配慮されている。

 インテリアではインパネやリヤセンターコンソール、後席折り上げ天井のオーナメント、ドアのアームレストなどに本杢パネルがふんだんにあしらわれている。美しく端正な柾目を生かすべく、タモ材の原木の中心からしか採れない部分が厳選されている。本杢パネルの製造は熟練の匠によって行われ、塗料を刷毛で塗布して拭き取る工程を繰り返す「ワイピング塗装」が施される。この工芸的な手法によって塗料が木目にしっかり吸収されるため、木目の濃淡を一段と際立たせることができる。仕上げにはクリアコーティングを行い、さらに研磨することで最上級の艶と輝きを持たせている。

 インパネ部は、運転席から助手席側までを1.46m幅の本杢パネルを通して水平基調を強調したデザインとしている。先代では平面パネルだったが、新型では3Dの立体曲面としている。これを実現するために、パネルを接合する基材(板)をNC旋盤で15時間かけて削り出している。とくに曲面部は刃送りを0.1mmにして滑らかさを追求。上下で2種類の本杢を組み合わせ、インパネおよびエアコンのダクトなどとの接合部ではすき間をゼロに設定し、極めて精緻な仕上がりとしている。

 リヤのセンターアームレスト部には、3つの本杢パネルをあしらっているが、これらが揃ったときにあたかも一枚の板に見えるように、素材を選定する段階から同じ板で作るように管理されている。また、木目をシンメトリカルに見せるため、一枚の板を本のように開いたものを使うというこだわりようだ。

 リヤシートは高級ソファのような深みのある座り心地を提供するために、座面をコイルばねとSバネで支える構造を採用している。上下ストロークを増して振動吸収幅を広げたことで、大きな振動が生じても底突き感のない柔軟性が維持できる。リフレッシュシステムは、エア式でシートバックのなかに埋め込まれたエアブラダ(隔膜)を作動させることで、指圧のような心地よさが得られるようになっている。シートの座り心地と相まって、ショーファーカーとして、まさに究極とも言える心地よさが追求されている。

 アームレストの高さはセンターとドア側で統一し、自然な姿勢でくつろげるよう設定している。センターアームレストのボックスは標準サイズのティッシュボックスが入る容量とし、その状態でもUSBやHDMIのコネクターが余裕を持って使えるようになっている。また、アームレストのテーブルやカップホルダーの開閉動作は概ね1秒で行われるが、可動部の大きさが違ってもスピードが同じに感じられるよう、0.2秒ほどの差が設けられている。


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