“壊れにくい”という部分でも評価
モスクワで街を走るクルマを見ていて気がついたことは、レクサスブランド車がやたらと走っていることである。とくにNXについては東京都内よりも見かける頻度は多いのではないかと感じるほどよく走っている。続いて見かけたのがLX570。これも筆者の日本での生活圏だけで見れば、およそ見かける機会はかなり少ないのだが、モスクワ市内では当たり前のように見かけることができた。ちなみにランドクルーザーはプラドを含めてLX570の比でないほど見かけることができた。
レクサスを見かけるといっても、新車ではこの2台が圧倒的に多かった。あとは発売して間もないということもあるのか、LSは新型ではなく(1回だけ見た)先代モデルとなるがこれも結構見かけることができた。中古車では日本ではハリアーとして販売されていた初代RXをやたらと見かけた。こちらは北米あたりから輸入されているようなのだが、たまに日本から入ってきた右ハンドルの初代ハリアーも走っていることもあった。
AEB(Association of European Businesses)の統計によると、2018年7月のロシアでのレクサス車の販売台数は1966台で、1月から7月までの累計販売台数は1万3473台となっている。北米での2018年7月の販売台数は2万5403台(1月からの累計販売台数は16万403台)、日本国内では3631台(1月からの累計販売台数は3万6593台)なので、統計数字で比較すると目立って売れているというわけではない。
ここで気をつけたいのが国土の広いロシアでは、マーケットを語る時にロシアとひとくくりにしてはいけないと聞いたことがある。モスクワ、サンクトペテルブルグ、そしてその他の地域と3つに分けて考えるということだ。これはレクサス車だけに限ったことではない。モスクワ市内で西ヨーロッパブランド車やレクサス以外のモデルや韓国車などがよく売れていても、それはあくまでモスクワ市及び近郊の話となる。国土の広いロシアなので、地方部はどうしても外資ブランドでは販売ネットワークが手薄になりがち。そこで結果的にロシアで2018年7月にもっとも売れたブランドはロシアンブランドのラーダとなるわけだ。
モスクワ市内及び近郊では確かにその目撃頻度から見れば、レクサスは大ヒットブランドといっていいだろう。空港からホテルへ向かうタクシーの車内でドライバーはお世辞抜きで信号待ちにて並んだ先代LSを指さして、「レクサスは最高だ」と語ってくれた。その運転手が興味深い話をしてくれた。「最近のドイツ車は新車のほうが壊れやすい」と言うのだ。確かに最近のレクサス車は押しが強い顔つきなどを採用しており、ロシア人はそんな押しの強さにほれ込んでいるようだが、それだけでなく“壊れにくい”という部分でも評価されているのかもしれない。
ロシアでは、日本だけでなく、西ヨーロッパ、北米、中国などから良質な中古車が輸入されており、これが新車販売の大きな“障害”になっているともいわれている。現状ではさまざまな“大人の事情”から中古車輸入を規制する(全面中止など)ことはほぼ不可能ともいわれている。そのなかで、今回はモスクワ市内だけの様子となるが、新車でレクサス車を多くのひとが買って乗ってくれているということは、モスクワ地域での人気は底堅いものがあるともいえるかもしれない。