【試乗】新型ルノー・メガーヌR.S.の5つの要素が生む超安定的コーナリング!
メガーヌR.S.は間違いなくホットハッチの血統
モータースポーツの頂点であるF1を始め、さまざまなレース活動で得た技術が注ぎ込まれたルノー・メガーヌR.S.が日本上陸した。今回は箱根ターンパイクにて触れることができたのでリポートしていこう。
まず試乗するに際して、メガーヌにはすでにワインディングスペシャリストと表現できる本サイトでもリポートしたメガーヌGTがある。そちらを読んで頂ければわかるが、そのモデルの完成度が高いからこそ、果たしてメガーヌR.S.はどのような仕上げをしたのか? 存在意義は? など、さまざまな疑問や心配、原稿書きづらいのでは? などの複雑な思いを抱きながら触れ出した。
しかしながらF1にも参戦するメーカーなので当然とも言えるが、見事なまでにGTの先の世界を今回のR.S.では見せてくれた。
先に結論から行こう。その乗り味は、若干硬めだ。GTをグランドツーリング的な味付けと表現するなら、R.S.はガチガチではないが確実にホットハッチ系の血統が入っている。
それと同時に気が早いだろうし、出るかどうかの“裏取り”もできていないが、今回R.S.の世界を垣間見ると自然とわかる。この先のスポーツの世界がメガーヌには必ずある。それが先代にも用意されたメガーヌトロフィーに相当するのかは未知数だが、まだ余力を残しているように思えたのだ。
剛性では不利な5ドアボディがもたらす路面追従性
要になるのは、5つ。順番に行こう。
まずは当たり前だがボディ。しかしながら、先代の3ドアタイプとは異なり、今回のメガーヌR.S.は5ドアハッチバックタイプ。背景にはスポーツカーにも実用性を求める声がグローバルで大きいからだという。結果としてボディの剛性感は先代と同等。本来なら上がっていると表現したいところだが、やはりドアの開口面積が増えれば、その分ハードにワインディングを走ったときに若干だがボディが動く。
だが、それが今回のR.S.に奥深いグリップ力とも言える、路面追従性を出しているのだろう。綺麗な路面だけであればボディは強固に限るが、一般道の路面ではいなしも重要。それを実用性のために採用した5ドアボディが見事に併せ持った印象。見方を変えれば、だからこそ5ドアをやめた瞬間に、さらなるスポーツの極みの世界が手に入ると思い前述したわけだ。何にせよこれから述べる運動性能を家族5人でも使えるモデルで備えたのは見事だ。
2つめは、メガーヌR.S.のカッコ良さにもつながるワイドボディ。フロント左右合計60mm・リヤ45mmのオーバーフェンダーが付いており、ただ者ならぬ迫力と存在感そしてレーシーな雰囲気を漂わす。もちろんこれがカーブでの踏ん張り感に繋がっているのは言うまでもないだろう。GTと較べても、旋回力が大きく違い、その能力をフル活用したらサポート性のよいシートでさえ剛性不足感を得てしまうほどだ。
ひとつ注意が必要なのは、車幅感覚がつかみにくいこと。正確には室内からの見た目はGT同様なのだが、左右30mmのオーバーフェンダー分の幅広感が目から情報として得られないので、慣れるまで想定より車線の白線に数cm近づきすぎている。
フロントのDASSが旋回中の路面の凹凸を見事に吸収
そんな細かく繊細にハンドリングをコントロールできるのも、3つめに挙げるダブルアクスル式の歴代メガーヌが得意とする特殊フロントサスペンションであるダブル アクシス ストラット サスペンション(DASS)。
ボディ幅が広がりハンドル切れ角が浅くなるので、取り回しは犠牲になるが、1.8リッターツインスクロールターボの279馬力/390N・mをフル発揮しても、FF特有の加速力が、ハンドリングの手応えや旋回特性に影響を及ぼすトルクステアをほぼ解消できる。これにより狙ったラインをビタッと狙い撃ちできるし、6速EDC(ダブルクラッチ方式)のセクセル操作にダイレクトな加減速反応を存分かつ繊細に使いこなせる気持ちよさと楽しさに繋がっている。
ちなみにスポーツにするとそのスピーカーからも排気音を助長する音が追加されてより刺激が増すのだが、これも前述した癖のないハンドリングがあるから純度高く刺激を受け取れるというものだ。
そして4つめHCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)と評されるダンパーの採用。ダンパーのなかに減衰特性の異なるダンパーを要するダブルダンパーと理解してもらうと早い。この実力は見事であり、個人的にはGTとの最大の違いを生んでいると認識している。
具体的には、外輪が大きく縮むような気持ちよい旋回をしているときに、路面の凸凹があったとしよう。GTでは不安定にこそならないが足まわりが若干底付くような動きと共に車両が跳ねてグリップレベルが変わる。しかしR.S.では、その凸凹をもう一つの減衰機構が動き出すような動きと共に吸収。目から入る路面情報では、跳ねるのを予測して身構えるが、その凸凹を吸収しながら吸い付くように曲がる。
もともと最後5つめの要素である、リヤ躁舵機構の「4コントロール」の魅力は、路面に吸い付くようなオンザレール感にあるが、それがなぜこんなに安定する? と不思議に思えるほど研ぎ澄まされた印象だ。
唯一の不満はコラム固定式のパドルスイッチ
最後にその4コントロールも威力を発揮。ノーマルモードでは時速60kmまで逆位相躁舵の旋回重視で、以上は安定指向の同位相躁舵になるが、レースモードではその境界線が時速100kmになり、一般道で使う限りほぼ全て旋回が鋭くなる逆位相となりどこまでもグイグイ曲がるクルマとなる。正直、サーキットなら良いかも知れないが、ハンドルに敏感でコントロールしづらく、安定しているのだが落ち着き感がなくなるので、レースモードの一般道での出番はあまりないと言うのが個人的感想。
それよりもGTと同様に、コンフォートモードの際などにフロント舵角に頼らず曲がることで前後ロールが穏やかになる特性や、運動性能を求めたときに通常モデルよりも足まわりをかためず目標性能を得られる乗り心地にこそ価値があると判断。
何にせよ、これらさまざまな技術を駆使して、ホットハッチの第一線の実力を備えているのは間違いがない魅力的なモデル。
最後にひとつ、ルノーさん、メガーヌR.S.トロフィーの際には、是非ともパドルシフトをハンドルと共に回るタイプにして頂きたい。旋回中に変速できるのをパドルシフトの一つとするなら、共回りしないポスト備え付けではハンドルから手を離さないと使えないからだ。