オトクなのはユーザーだけじゃない生産上のメリットもあり
新型車がデビューしてしばらくすると初期受注について発表されるが、そうした数字を分析する記事などで「新車効果」という言葉を見かけることがあるだろう。新型車がデビューした直後は、広告宣伝も増えるし、さまざまなところで話題になりやすい。
そうした目的で設定される特別仕様車は、カタログモデルに比べて、装備を充実させつつお買い得な価格設定としている。戦略的には、バリューフォーマネーを高めることで販売に勢いをつけたいという狙いだが、そうであればカタログモデルの装備内容や価格を改定すればいいようにも思える。しかし、そうするとクルマの価値が下がってしまう。
もし実質的にデビュー時より安くしてしまうと、それは中古車価格の下落につながり、買い取り価格も下がってしまう。日本ではリセールバリューを重視している部分もあるため、安易にカタログモデルの価値を下げるようなことはしづらい。そこで、建前として「特別仕様車だから……」という言い訳が必要になってくるのだ。
また、特別仕様車ではボディカラーを制限したり、選べるメーカーオプションを制限したりするなど生産性についても手間のかからない方向になるよう配慮しているケースがままある。まして「オプションで付けるものはなにもない」と評されるような装備の充実した特別仕様車であれば、なおさらだ。いわゆる見込み生産が可能となるのもメーカー側のメリットだ。それは販売店においても商談の手間が減らせるなどメリットにつながるといえる。
さらに輸入車においては、ボディカラーを一色にするなど仕様を限定した特別仕様車(台数限定であることが多い)は販売上のリスクを減らすというメリットになる。こうした限定車といわれるモデルは、お買い得な仕様だけとは限らない。いわゆるコンプリートカーのような、高価で本当に特別なモデルも存在している。その一方で、海外を中心に「ローンチエディション」といってデビュー時から台数限定の特別仕様車を用意するパターンも増えてきている。こうした限定車は仕様を固定していることが多い。
また、事実上の予約販売となることが多く、生産立ち上げに都合がいいと考えられる。もちろん、ユーザーからすると台数限定モデルというのは希少性もあり、前述したリセールバリューが高い傾向にあるのはメリットといえるだろう。