クイックに操作できる小径でも力が入りやすい
スポーツモデルのハンドルのグリップ部分が太いのは、ハンドルの直径と関係がある。ハンドル径が小さいと、円周上で同じ量、たとえばコブシ一個分ハンドルを切ったとき、直径が大きなステアリングよりもフロントタイヤの向きがより大きく変化し、クイック&シャープな切れ味になので、スポーツカーは小径ハンドルになる傾向がある。
一方で、小径ハンドルになるとレバレッジ(てこの原理)の働きが弱くなるので、ハンドルは重くなる。重いハンドルを回すには、必然的により大きな握力が必要になるわけだが、ここでグリップ部の太さが関わってくる。
グリップの太いハンドルは、掌とハンドルの接触面積が増えるので、ギュッと力を込めて握らなくても、ハンドルをホールドすることが可能。つまり、より少ない力で操作できるようになるので、疲れにくく、その分繊細な操作もしやすくなるので、小径ハンドルには太めのグリップという組み合わせが定番となっているというわけだ。
もっとも掌の大きさや握力など、一人ひとりでずいぶん違う。レーシンググローブを装着してのスポーツドラインビングを優先するなら、素手でベストフィットするサイズよりやや細めの方がマッチするし(ナルディなどはその傾向)、革の素材やハンドルの裏側の凹凸の形状・間隔などでも、フィーリングのいいハンドルというのは変わってくる。
基本的には、適度にグリップ太く、滑りにくくて馴染みやすい上質のレザーを使い、フィット感がいい形状で、やや小径というのが、スポーツカー用のいいハンドルの条件。そのうえで、個人の手に合ったカタチとサイズから選ぶのがなにより肝要。
握り方の極意は「大ゆび人指ひとさしを浮ける心にもち、丈高指(中指)はしめずゆるまず、くすし指小指をしむる心にして持つ也。手の内にはくつろぎの有る事あ(悪)しし」(宮本武蔵 五輪書 水の巻 太刀の持ちやうの事)に尽きる。
つまり、「親指と人差し指を浮かすような感じで持ち、中指は締めず・緩めず、薬指・小指は締める気持ちで、握った手の中に遊びがあるのはよくない」ということ。
ギュッと力を入れて握り込むのは論外だし、軽く握り過ぎて、掌とハンドルの間に隙間があるのもダメ。人間は、ハンドルやモノを握ると、全身が力んで固まる宿命にあるので、できるだけ力むことなく、ホールドできるハンドルを選ぶのは非常に重要。
できれば、いろいろなクルマ、いろいろなハンドルメーカーのハンドルを実際に握らせてもらって、一番しっくりするハンドルを妥協なく選ぶと、きっとそれは自分だけの宝物になるはずだ。