古い街並みで高架道路を作るに作れない
モスクワを初めて訪れた時に驚いたのは市内中心部(市の中心部となる赤の広場から徒歩15分ほどの場所)の大通りを走るクルマの速度レンジの高さである。目算でだいたい時速80㎞で走り抜けていた。もちろんその状況は今回訪れても変わっていない(もちろん渋滞時は除く)。
なぜ、市内中心部でクルマがそんな速度レンジで走れるかといえば、信号機がほとんどないのである。当然ながら大通りには横断歩道もかなり少ないというかほとんど見かけないことになる。それでは歩行者はどうやって道路を横断するのかと言えば、通りの下を走る地下鉄の改札へ向かう地下通路を使ったり、道路横断用の専用地下道が用意されているので、それを使うことになる。
しかも市内中心部の大通りには中央分離帯がない。横断歩道がなく、中央分離帯もない大通りになっている理由は、ソビエト時代に非常時に戦車など軍用車が走りやすいように障害物を極力排除した道路設計にしたことがあるようだ。ソビエト時代には党や政府幹部のクルマがビュンビュン飛ばせるように設計したのではないかとの話を聞いたことがある。
いまも渋滞が激しいと、先頭の警護のBMW7シリーズなどが、青いパトランプとサイレンを鳴らして反対車線を走り、その後ろに政府幹部などを乗せたクルマが走り抜けるシーンに遭遇することもある(渋滞していなくても、かなり速い速度で駆け抜けている)。
もともとソビエト時代は、クルマがいまほど増えることは想定していないので、想定外の台数がいま道路を走っていることになる。しかも古くからの大都市なので、いまさら新規に道路をつくると言っても、日本のように首都高速のような高架道路を建設するわけにもいかず、とくに環状道路は慢性的な交通渋滞に見舞われている。
空港への道路も、今回利用したドモジェドヴォ空港などは、最終的に空港へ向かう道は地図を見るとほぼ1本となっており、日曜の午後でも渋滞が発生している。
シェエレメチェヴォ空港へ向かった時には、そのときのタクシー運転手によると「原因不明の道路閉鎖がたまに急に発生する」と半分冗談交じりで脅された。彼の予想では政府のお偉いさんの移動のために、急に閉鎖するのかもしれないと言っていた。
慢性的に渋滞も激しいので、モスクワ近郊には3つの国際空港があるのだが、それぞれの空港へ向かう鉄道が整備されている。ただ筆者は荷物が多いので、どうしてもタクシーに頼ることになるので、時間に余裕をもってタクシーを呼んでもらうことにしている。
普通に流れていれば速度レンジが高いのだが、部分的にヘビーな渋滞が発生しているので、結局は移動に時間がかかってしまうのが実状のようである。