販売1位を謳いたいために人気車は在庫を多数抱える
お盆休みも終わり、一部地域では小中学校の新学期も始まったりしてくる8月下旬になると、事実上年度締めでの上半期決算セールがスタートしている。
2・3月を中心に展開される事業年度末決算セールは、年間を通じてもっとも値引きなどの好条件を引き出しやすく、新車がもっとも売れる時期であるということは広く知られているが、上半期末決算セールも負けず劣らず好条件を引き出しやすい時期であることはあまり知られていないようである。
上半期末決算セールでの新車購入のポイントとしては、どのメーカー系ディーラーでも積極的な販促活動を展開してくるのだが、とくにホンダと日産系ディーラーの力の入れ方が目立つのが特徴的である。
そのわけは、とくにホンダ系ディーラーで顕著なのが、ディーラーが売れ筋車種のなかで、とくに売れ筋となるボディカラーやメーカーオプションを装着した車両を中心に、あらかじめディーラーがストックしている“販売店在庫(流通在庫などとも呼ばれている)”をメインに販売しているので、この販売店在庫車両を中心に“棚卸セール”的な意味合いも濃くなるので、ホンダや日産は販売店在庫のなかに購入希望車があれば、かなりの好条件を引き出すことが可能なのである。
販売の主流となる軽自動車やコンパクトカー、ミニバンなどはとくに販売店在庫車両が目立つのだが、好条件を引き出しやすいのはそれらだけでなく、たまたま販売店在庫車両のなかに、お気に入りのスポーツカーでボディカラーや装備などに満足するモデルがあれば、これも好条件を引き出すことは十分可能なのである。つまり、年度締めでの上半期末となる9月中に登録(ナンバープレート取得)ができるクルマが購入対象ならば、かなりの好条件が狙いやすいのだ。
また今期の特徴としては、販売店在庫を極力持たなかったトヨタ系ディーラーが、プリウスやアクア、ノア系ミニバンなどを中心に販売店在庫車が目立ってきている点。
ノートがe-POWERも含めて2018暦年締めでの上半期登録車販売台数ナンバー1を達成して声高にアピールしており、事業年度締めでの上半期締めでも“コンパクトカークラス”や“登録車”などいったカテゴリー別での“2018年度上半期販売ナンバー1”をねらって、かなり積極的な販促活動を展開してくることはほぼ間違いない。ただ今年4月以降は毎月締めでの登録車販売ナンバー1はアクアが死守しているのが実状。つまり両車が激しいデッドヒートを展開しているのである。
そのためノートが今回の上半期締め決算セールにかける思いは並々ならぬものがあり、アクアも販売店在庫に余裕があるようなので、ノートを完全に意識しており反撃体制に入っているので、この2車は今期のおすすめモデルといってもいいだろう。
ノア系3兄弟とセレナのバトルもハンパではない状況となっている。2017事業年度締めでヴォクシーはセレナを抜き去りミニバン販売ナンバー1となったのだが、すぐにセレナが2018暦年締め上半期販売ナンバー1となり抜き返している。トヨタとしては「ノア系3兄弟合わせれば圧倒的に売れている」と余裕を見せているのだが、セレナが多数の自社登録を行ってまでも、ナンバー1の座を死守しようとしている。ノア系3兄弟もハイブリッドを中心に販売店在庫車は豊富にあり、好条件を引き出しやすくなっている。
一方ホンダはN-BOXの含軽統計(登録車と軽自動車を合わせた販売統計。つまりここでナンバー1になると、日本でもっとも売れている新車となる)での、“2018年度上半期販売ナンバー1”を狙っているのはほぼ確実。軽自動車同士のトップ争いでは自社届け出での販売台数上積みが“お約束”となるが、もちろん値引き条件の拡大による小売り販売の強化もしてくるのでねらい目である。
またホンダはN-BOX以外でも販売店在庫車両と工場へのオーダー車両では値引き額にかなり開き(在庫車が圧倒的に値引きが拡大しやすい)があるぐらい、販売店在庫車への販売依存が高いので、販売店在庫車のなかにお気に入りのボディカラーで希望オプションを装着したものがあれば、好条件での購入が可能となっている。
もちろんスズキやダイハツもN-BOXを意識した販促キャンペーンを展開しているので、好条件が出やすくなっている。
値引き交渉のポイントはズバリ下取り査定額。厳密にいえば車両本体価格からの値引き(車両本体値引き)だけを膨らませての値引きアップはかなり厳しい。オプションからの値引きやローンを使えば、提携信販会社からディーラーに渡されるバックマージンの一部からの値引き支援など、車両本体値引き以外の周辺値引きや値引き支援で全体の値引き条件をアップさせていくのだが、そこでとくに値引きアップのカギを握るのが下取り査定額の上乗せ(下取り車の査定額に値引きアップ分を上乗せすること)となる。
“レクサス車は基本的に値引きゼロ”と呼ばれるが、これは車両本体値引きでのお話となるようで、レクサス全店でやっているかは定かではないが、車両本体値引きはゼロになっているが、下取り車の査定額に数十万円上乗せしてあった、レクサス車の注文書を見たことがある。
下取り査定額はあくまで当該ディーラーが下取り予定車を“値踏み”した額となるので、いまではメーカーの管理も厳しくなった車両本体値引きの拡大を避け、自由裁量範囲の広い下取り査定額に、値引きアップ分を上乗せしてくるのが“常套手段”となっているのである。
また上半期末決算セールのような“増販期”と呼ばれる時期には、“査定額を一律10万円アップ”などと、底上げしてくるディーラーもある。また買い取り専業店も新車販売が活発に動くならば、下取り予定車も多く発生すると判断して、買い取り額をアップして買い取り強化などを行ってくるので、好条件を引き出すなかでの下取り車の立ち位置はかなり重要なのである。