乗用ユースのニーズが大きいため商用でのライバル超えは難しい
これまで後輪駆動が当たり前だった軽商用1BOXの世界に、ホンダが投入する「N-VAN」は、いまや日本一売れているN-BOXと基本設計を同じくしたFFモデル(4WDの設定もあり)。
これまでホンダが同カテゴリーに用意していたアクティバンがミッドシップレイアウトの後輪駆動だったことを考えてもドラスティックな変革で、はたしてその挑戦が市場に受け入れられるのかどうか注目を集めていた。はたして、発表された初期受注は約1万4000台。2017年の“一年間”でアクティバンとバモスホビオプロを合わせても8769台しか売れなかったことを考えると、大躍進である。
とはいえ、ライバルであるダイハツ・ハイゼットカーゴとスズキ・エブリイの2017年における販売台数(数字は全軽自協調べ)を見ると、ハイゼットカーゴが6万3015台、エブリイが7万6442台となっている。N-VANの月販目標3000台という数字からすると素晴らしいスタートダッシュを切ったといえるが、軽商用1BOXのマーケットの二強に追いつくには、瞬間風速的ではなく、コンスタントに毎月5000~6000台を売る必要がある。
初期受注だけで結論は出せないが、アクティバンの後継としては大幅に伸びているが、ライバル2車を追い越すほどではないという印象だ。それ以前に、OEMである日産NV100クリッパーでさえ2017年には年間3万台を売っている。そこを超えてはじめて2強への挑戦権を得ることができる。
さらに、N-VANの初期受注からグレードによる内訳を見てみると、N-VANの販売を純粋に商用バンとして評価するのは正当ではないと思えてくる。最量販グレードは「+STYLE FUN」でありターボとNAを合わせると全体の44%となっている。
そして、乗用仕立てでもある「+STYLE」シリーズは、ホンダとしてはバモス(乗用1BOX)の後継という位置づけでもである。
「+STYLE COOL」と合わせると、「+STYLE」の比率は59%であり、純粋なアクティバンの後継といえるグレードは4割強の販売比率。つまり、台数ベースでいうと初期受注においても6000台足らずというのが、いわゆる商用バンとしてのN-VANの実力といえる。ひとまず、現時点では初期受注の数字をもってスズキ・エブリイやダイハツ・ハイゼットカーゴを超えた、と判断することは早計だ。
もっとも、追従クルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキなどで構成された先進安全装備「ホンダセンシング」を標準装備している点が、商用バンにおいてもセールスを左右するデバイスだと市場が判断すれば、N-VANが一時代を築く可能性も十分にある。
軽自動車というボディサイドの限られた規格においては、荷室を確保するためにはエブリイのようなキャブオーバー型が有利なのは事実だが、登録車の商用バンでは日産バネットNV200のようにFFベースであっても、市場は受け入れている。商用車の世界は保守的な傾向があるため、いきなりN-VANが主流になることはないだろうが、けっして可能性がないともいえない。
なにしろN-BOXを出す前はホンダの軽商用1BOX(キャブオーバーバン)におけるシェアは、4.3%(2017年)に過ぎなかったのだから……。