闇雲にパーツを投入すればいいというわけでもない
まるも「そのほか、男女の違いを感じた部分はありますか?」
大井戸「乗り心地と操縦安定性のバランスですかね……。その開発・評価は同じ部署でやってるのですが、それってじつは相反するところなんです。乗り心地を良くすると操縦安定性は低くなる傾向にありますし、操縦安定性を高めると乗り心地が硬くなってしまう。それをどこにバランスするのが、女性にとっていちばんなのか、というところはすごく悩みました。
やっぱり運転が不慣れな方にも安心して乗ってもらいたいので、乗り心地の良さだけでなく、安心感はしっかり確保しないといけない。そこが難しかったですね」
まるも「乗り心地に関しても、ミラ トコットは絶妙だなと感心したんですよ。普通に走っている分にはとても穏やかで、ほっこりするような感じなんだけど、大きめの段差を乗り越えたときとか、ちょっとオーバースピードでカーブに入ってしまったようなときには、ちゃんと剛性感というか、ガッシリとした頼もしさが顔を出すでしょう。あれって、どうやって実現してるんですか?」
大井戸「それは過去のモデルでの経験が生かされているんですが、サスペンションに強い入力があったときにロールを抑える効果が高い、リバウンドスプリングを追加しているんです。ミラ トコットはそもそもそんなにロールが大きなクルマではないのですが、乗り心地方向に振ったことで、少し足りなくなった部分を補ってあげるというところで、リバウンドスプリングがちょうどいい役割を果たしてくれました」
まるも「そうなんですね。通常だったらきっと、スタビライザーを前後に入れる、なんてことになっていたんですよね?」
大井戸「そうですね。でもスタビライザーになると、やっぱり鉄の棒を入れることになるので重量にも響きますし、燃費やコストを考えるとミラ トコットには過剰品質なのかなと判断したところもあります」
まるも「なるほど〜。そうした見えない部分の配慮も含めて、すべてがミラ トコットのほっこり安心できる乗り味を作り上げているんですね。やっぱり、ここまで徹底したミラ トコットらしさを貫くことができたのは、開発段階にも女性が携わったことが大きいと実感しました。女性が求めるもののニュアンスをしっかり男性たちに伝えるのはもちろん、大井戸さん自身もその真意を深く考えながら開発を進めてきたんだなと、今回あらためて感じさせていただいて、感激しています。大井戸さん、これからもぜひ、いいクルマをたくさん世に出してくださいね」
大井戸「はい、がんばります。ありがとうございました!」