PHVは先進性は体感できるが経済面でのメリットは少ない
ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHVまたはPHEV)とで、どちらが得かは、一概に言える話ではない。とはいえ、参考データを紹介してみる。
両方を同じように比較できるクルマとして、トヨタのプリウスとプリウスPHVがある。プリウスの車両本体価格は、242.9〜319.9万円である。プリウスPHVは、326.1〜422.2万円。差額は、83.2〜102.3万円と概算できる。
プリウスのJC08モード燃費は、Eグレードで40.8km/Lだ。8月半ばの全国平均ガソリン価格はレギュラーで146.2円なので、1km走行する際の燃料代を諸元燃費性能から計算すると、3.58円となる。
プリウスPHVのEV走行時の消費電力は、国土交通省審査値で10.54km/kWhであり、HV走行時の燃費はJC08モードで37.2km/Lである。まずEV走行時の電気代は、東京電力のごく一般的な家庭の電気料金を参考にすると、1kWhあたり30.02円なので、1km走行する際の電気代は2.84円と計算できる。HV走行では、プリウスのEグレードに比べ燃費性能が悪いので、3.93円だ。
年間1万km走ったとして、プリウスのEグレードなら3万5800円のレギュラーガソリン代になる。プリウスPHVでは、電気代だけなら2万8400円、HV走行のみとした場合は3万9300円だ。そのうえで、たとえばEV走行とHV走行が半々、5000kmずつとしたら年間の燃料代は3万3850円と計算できる。
プリウスとプリウスPHVの燃料代は、非常におおざっぱな計算例だが、1950円ほどPHVの方が安くなる可能性がある。しかし10年乗り続けても、1万1950円の差でしかない。点検整備代については、両方ともエンジンとモーターを搭載するので、ほぼ同等といっていいのではないか。これを、車両価格の約80〜100万円の差と比較しても、とうてい差を埋められるものではない。
仕事用としてもクルマを使うのなら、HVのほうが圧倒的に経済的であるのは言うまでもない。
経済性と別の面で、PHVの特徴は、搭載リチウムイオンバッテリーに電気が充電されてさえいればEV走行を日々利用でき、それは経済性だけでなく、静粛の高さや振動の少ない乗り心地、モーター走行による出足のよさと加速の滑らかさなど、体感的な部分での嬉しさを実感できるだろう。また、電気自動車(EV)と違って、出先で充電の手間がいらない気安さもある。
PHVは、将来的にEVを選ぶかもしれないという可能性を視野に、EV走行を日常的に体験したり、日々家庭で充電したりという手間がどれほどであるかを実体験したりすることができる。
プリウスPHVでいえば、ハイブリッドのプリウスの5人に対し、乗車定員が4人になるという制約があるうえ、新車購入から使用の過程で経済的な損得を考えるなら、選ぶ理由はない。
一方、将来的にEVと比較した場合には、日常的な点検整備代として、ブレーキの消耗が少なかったり、エンジンオイル交換が不要になったりと、モーター走行のみであるEVの利点がHVやPHVに比べ加わってくるだろう。