鞭打ち症状を軽減するためにも調整をきちんとしたい
クルマのシートについているヘッドレストは、『頭部後傾抑止装置』と言われる重要かつ偉大な発明品なのだが、残念なことにその重要性を認識している人は意外に少ない。ヘッドレストが、その効果を発揮するのは追突事故のとき。
(財)交通事故総合分析センターのデータでは、交通事故全体の約32%が追突事故で、死傷者数も、追突事故が約35%と高い数字になっている。この追突事故で、怖いのは追突した側でなく、追突された側の頸椎の損傷。後ろからクルマに追突されると、身体には停止慣性が働いて、全身が後方に強く引っ張られるような状態になる。
このとき、体幹部はシートの背もたれに支えられるが、首から上はヘッドレストが機能しない限り、強烈に後ろに反り返ることになり、頸椎を損傷。最悪、首の骨が折れて、死亡するケースも大いにあり得る。軽傷で済んだとしても、追突された側のドライバーは、90%以上が鞭打ち症状を訴えていて、その鞭打ち症状を軽減するためのヘッドレストの役割は非常に大きい。
最近は、テコの原理を応用して、衝突時にヘッドレストを持ち上げながら前傾させ、適切な位置へ移動させて頚部にかかる負担を大幅に軽減する、アクティブヘッドレストの装着車も増えていて、安全面で大きな成果を上げているが、このアクティブヘッドレストにせよ、スタンダードなヘッドレストにせよ、ヘッドレストの高さと位置を正しく調整しなければ効果は半減してしまうので要注意。
正しいヘッドレストの調整位置は、シートに座っている人を真横から見て、その人の目と耳を結んだ線の延長線上に、ヘッドレストの中心が来る高さ。また後頭部とヘッドレストの間隔も、できるだけ狭いほうが安全なので、ヘッドレストの前後の角度が調整できるシートは、できるだけヘッドレストと頭のクリアランスが狭くなるよう調子しておこう。
当然、ベストなヘッドレストの位置は、ドライバーの身体の大きさによって変わるので、複数のドライバーがハンドルを握るクルマは、乗車するたびにシートの前後位置、背もたれの角度の調整と合わせて、ヘッドレストの位置も自分に合わせる習慣を。ムチ打ちは、完治しづらく、後遺症にもなりやすいので、命に係わる頸部を守るためにも、ヘッドレストの重要性を見直してほしい。
なお、旧車など、もともとヘッドレストが付いていないクルマは別として、ヘッドレストが標準化されているクルマで、ヘッドレストを取り外して運転すると、保安基準違反になるので要注意(ヘッドレストが一体化のバケットシートなどはOK)。