アメリカ市場を意識したボディはスポーツモデルに不向き
とくにV35スカイラインは、対米輸出車(インフィニティG35)として、アメリカでのヒットを狙ったクルマになった。R34のように強固なボディを与えてカチッとした走りを追求するのではなく、ヨーロッパ車のようにしなやかさを前面に打ち出し、あえてボディを捻るように設計。全体のしなやかさで曲がるよう設計されているので、GT-Rのようなスポーツカーが求めるボディとだいぶ方向性に隔たりがあった。
こうした事情から、R35GT-Rは、「R●●」という形式名と、「GT-R」のネーミングだけ継承し、「スカイライン」とは切り離されることになった。個人的には、セダンベースであっても、BMWのM3やM5のように、飛び切り高性能なスポーツモデルもできるわけだし、セダンベースという制約があるからこそ、「スカイラインGT-R」の魅力は際立っていたと考えている。ベースにセダンがあるからこそ、「羊の皮をかぶった狼」という立ち位置もあったわけだが……。
逆にいえば、スカイラインの呪縛から解放されたR35は、4人乗りにも、フロントエンジンにもこだわる必要がなかったはずで、どうせなら、ミッドシップ・4WD、エンジン縦置き、ドライサンプの2シーターで作ればよかったと思うのだが、おそらく「スカイライン」の名は取れても、「GT-R」には「GT-R」の呪縛があるのだろう。
歴史と伝統のあるクルマを作るのは難しい。でも、それだけ愛されているのがGT-Rという存在。GT-Rらしさを継承しつつ、いつまでも世界に誇れるGT-Rであってほしいので、GT-R開発陣には、心からエールを送りたい。