卓越した悪路走破性をベースに電子制御システムをプラス
駆動系では、トランスミッションは従来同様の5速MTと4速ATが採用されているが、エンジンが変更されことに合わせて、結合部(ベルハウジング)の形状変更が行われている。
さらに5速MTではシフトレバーの取り付け方法を変更して、加速中に発生する不快な振動の伝達を大幅にカット。これは、シフトレバーユニットの取り付けが、先代ではトランスミッションへのマウント4点だったのを、新型では前側をトランスミッションのマウント2点、後ろ側をラダーフレームのマウント1点としたもの。回転方向や前後方向の揺れをシフトレバーに伝えにくい構造となっている。
4WDは伝統の機械式副変速付きパートタイム4WDだが、トランスファーの切り替えはレバー式を採用。先代では初期型がレバー式で、その後ボタン式の電動アクチュエータ式だったが、今回はあえてシンプルな方式に戻した格好だ。
これは、各国のジムニーユーザーへのヒアリングを行った結果、切り替えを視覚や操作の感触で認識しやすいレバー式への変更を望まれたため。そのためトランスファーは電動アクチュエータ部を廃止しているが、基本的な構造は従来と同じである。このような原点回帰を図りつつ新型にふさわしいアイテムとして、電子制御式のブレーキLSDトラクションコントロールが加えられた。
パートタイム4WDは前後の車軸へ確実に駆動力を伝達するものの、それぞれの片輪がスリップしてしまうと駆動力が伝わらなくなってしまう。それを回避するためにLSDが装着されるが、舗装路での異音や操縦性の違和感が出ることがあるほか、とくに摩擦板式ではメンテナンスも必要になる。
ブレーキLSDは、空転した車輪だけにブレーキを掛けて車軸上の反対側に駆動力を伝達することでオープンタイプのディファレンシャルでも高い走破性を引き出してくれる。このシステムは4WD-Lにすると、ESPの機能であるスタビリティコントロール(SC)がオフとなり、トラクションコントロール(TCS)では、エンジントルクダウンを行わずブレーキの介入度がより高くなってくる。こうすることで、悪路の登坂などでも駆動力を途切れさせることなく走破できる。また、ブレーキLSDの作動を繰り返した際の温度上昇やオプションのヘリカルLSDを装着した場合の作動も検証されている。
登坂や降板での使い勝手をよくするヒルホールドコントロールやヒルディセントコントロールも追加されているが、ヒルホールドは4WD-Lの場合、ESPスイッチの長押しでオフにすることができる。これは車両を前後に揺さぶりながら脱出するテクニックを邪魔しないためのものだ。ヒルディセントは4WDのL-H双方で作動するが、速度はLが5km/h、Hが10km/hに設定されている。もちろんアクセルを踏めばそれに応じた速度になる。