半世紀に亘って守り続けてきた基本構造を継承
ジムニーが半世紀にも亘って支持されている理由のひとつが、本格オフローダーとして欠かせない屈強なシャシーやサスペンションにあるのは言うまでもない。もちろん、新型ジムニー/ジムニーシエラでもラダーフレーム構造と3リンクリジッドアクスルサスペンションが踏襲されている。
新開発のラダーフレームは基本的なディメンションは先代と大きく変えていないものの、構造やフレーム材を変えることで走行性能や乗り心地を大きく進化。フレームは鋼板をプレスしたりパイプを組み合わせて作られているが、先代は通常鋼板で引張強度270Mpaに対し、新型では高張力鋼板の590MPaが採用され、軽量化と強度の両面で性能が大きく向上。ラダー自体も中央部で断面積を増やし、CAE解析によるフレーム形状や板厚の最適化を実施している。
さらに、フレームセンター部はX(エックス)メンバーで左右のラダーをつなぎ、ねじり剛性を高めるとともにオフセット衝突時に片方のフレームだけが押されるような変形をなくし、左右のラダーに入力を分散させるようにしている。ラダーフレームをつなぐメンバーの本数も増やし、トランスミッション下付近と、リヤ側にも追加でクロスメンバーを入れている。
こうした改良によってねじり剛性は従来の約1.5倍となり、フレームのしなりが少なくなったため、サスペンションが有効に作動するようになった。これが操縦性の節度と安心感を高めることに大きく貢献している。また、車体振動を抑える効果も高くなり、乗り心地でも新型にふさわしいものとなっている。フレームのエンジンより前の部分は、万が一の衝突時でも衝撃を吸収しやすい構造となっている。
ボディとの取り付け点は8カ所あるが、ボディマウントゴムのサイズを拡大するとともに上下に柔らかく、横方向に硬くすることで、ボディに伝わる振動をカットしつつ操縦安定性でのダイレクト感は失わないようにチューニングされている。これによってオンロードでの快適性と操縦安定性の面でもレベルアップを果たしている。
サスペンションは、従来と同様で前後とも3リンクリジッドアクスルとコイルスプリングの組み合わせ。開発の過程では乗り心地面で大きなメリットのあるフロント独立懸架も検討されたそうだが、伝統の悪路走破性やタフネス性を堅持した。古めかしく見えるリジッドだが、本格オフローダーとしては大きな武器になる。
まず、悪路走行で突起や穴を通過する際、片方のタイヤが上下に大きくストロークしたとき、車軸のハウジングでつながっている反対側が逆の方向に動いて接地性を確保するように作用するので走破性が確保される。次に、独立懸架だとタイヤが沈み込んだ場合にデフ部が路面に近くなってしまうが、リジッドだとディファレンシャル部もタイヤと同じ動きをするため、地上高が確保されていて干渉を防ぎやすい。
さらに、ドライブシャフトなどの回転部が頑丈なハウジングに内蔵されているので、地面や石、倒木などとの接触があっても駆動系への致命傷を避けることができる。つまり頑丈で壊れないサスペンションや駆動系にすることが可能なのだ。今やメルセデス・ベンツのGクラスがモデルチェンジでフロント独立懸架となっため、現行車でフロントリジッドを採用するのはランドクルーザー70、ジープラングラー、そしてジムニーの3車となっている。
サスペンションリンクは先代と共通のダクタイル鋳鉄製で形状寸法も同じだが、組み込まれるブッシュは新型シャシーに合わせた特性の見直しを実施している。コイルスプリングのばね定数を下げ、ショックアブソーバもとくに縮み側で減衰力を下げる一方で、スタビライザーは太くしてロール剛性を確保。乗り心地と操縦安定性を大幅に向上させている。これらの改良もフレームの性能が大幅に上がり、サスペンションの動きが緻密に設定できたことで実現した。
快適性の面では、穴や継ぎ目を減らした一体成型フロアカーペットに全面フェルトを被せることで、ロードノイズやトランスミッションノイズの侵入を減らしたり、天井のルーフライニングにあるサイレンサーの設定範囲を広げて吸音性能を高めている。エンジンルームからのノイズも、エンジンルーム内のダッシュアウターサイレンサーとキャビン側のダッシュインナーサイレンサー、フロントフェンダーカバーで透過音を効果的に遮断している。さらに遮音構造を持つウェザーストリップやリヤサイドのクオータートリムサイレンサーで、風切り音や後席の透過音を低減している。