思わず日本かと思うような「払い下げ」車両も
世界の都市のなかでも交通渋滞のひどさで有名なのがジャカルタ。そのジャカルタではいま2019年前半の開業をめざして地下鉄工事を行っているが、いまのところ市内の移動手段は車輪の数を問わず“自動車”がメインとなっている。ここではそんなジャカルタの交通手段の一部を紹介しよう。
■BRT(トランスジャカルタ)
バス停というよりは電車の駅のプラットフォームのような専用乗り場で乗降し、専用レーンを走る、“電車のようなバス”。専用レーンを走るのだから渋滞など関係ないかと思いがちだが、一部一般車線を共用しているので、結局渋滞に巻き込まれることになる。
ICカードなどで自動改札を通りホームに入るので、日本人でも乗り方は馴染みやすい。筆者は時間ができればコタ駅~ブロックMバスターミナル間を結ぶ路線に乗っている。
当初は中国メーカー製のバスを導入したのだが、早い段階で、乗降ドアが“バタンバタン”とポルターガイスト現象のように意味もなく開閉するといった不具合が発生するなど、“ヤレ”が目立ってしまったので、その後スカニアなど欧州系メーカーのバスシャシーにインドネシアの架装メーカーのボディをまとった車両へ新規導入を切り替えている。エアコンもガンガン効いており、快適に移動することができる。
■中型路線バス
“メトロミニ”とか、“コパジャ”などとボディサイドに書かれている。見ていると決まったバス停はないようで、ドライバーのほかに車掌さんのようなオジさんがいると、熱心に“客引き”行為のように声をかけて乗客を集めていた。運賃収受は“車掌オジさん”がいれば、このひとがやっているようだが、ドライバーだけならば、ドライバーが運賃収受も行っている。
かなりドメスティック色の強い乗り物なので、インドネシア語に堪能でないと、なかなか乗りこなすことができないようである。また見ていると、いつも爆走していて危険な乗り物のように見えるし、ノンエアコンなので快適性もいまひとつ。
最近はトランスジャカルタを運営しているジャカルタのある州営バス会社が、エアコン付きの中型路線バスをミニメトロやコパジャの路線で運行しており、コパジャやミニメトロは以前ほど見かけなくなった。
■ミクロレット
ダイハツ・グランマックス(タウンエース&ライトエーストラック)などのトラックをベースに、乗客が乗れるように荷台部分を架装した“乗り合い小型バス”のようなもの。道路の横断やタクシーに乗ろうと、道端でまっているとミクロレットが「乗っていけ」とばかりに、フラフラとすぐ寄ってくる。以前オートショー会場“最寄り駅(実際はかなり遠い)”に降り立つと、そこから先の無料シャトルバスなどがなく困っているとミクロレットのドライバーが声をかけてきたので、乗ってみると全然違う場所まで運ばれたことがある。当然ながらミクロレットもエアコンは非装着である。
■バジャイ
タイなどで“トゥクトゥク”と呼ばれている三輪タクシーを、インドネシアでは“バジャイ”と呼んでいる。見た感じからわかるとおり、長距離移動には不向きなのは明らか。タイのように観光がてらに乗るといった雰囲気もあまり感じない。
■バイクタクシー
“オジェック”と呼ばれる二輪タクシーでは、配車アプリを活用したライドシェアリングサービスで世界的に有名なウーバーが東南アジアから撤退するときに、その事業を売却した東南アジア最大のライドシェアリング会社“グラブ”が四輪だけでなく二輪でもサービスを行っており、グラブの二輪ライドシェアサービスが市内でも目立っている。
■鉄道
いまやジャカルタの観光名所といえるのが、“ジャボタベック(ジャカルタ近郊鉄道)”を走る、現役から引退し無償譲渡された東京メトロ千代田線や都営三田線、埼京線や南武線といった、馴染み深い東京及び近郊の通勤電車たち。
それっぽく再塗装されているものの、思わず懐かしくて出張に来た時には意味もなくこれらの車両に乗るというビジネスマンも多いようだ(かくいう筆者も毎回乗車して楽しんでいる)。鉄道インフラの関係で日本で活躍していたころよりはだいぶ低速で走っているが、筆者などは“埼京線の十条あたりから池袋の区間と同じような臭いがする(実際高架も多いので明らかに違うのだが)”と、いつも感動している。
定宿最寄り駅の“サワパサール駅”から、終点の“コタ駅”まで乗るのが筆者の定番ルートである(これ以上乗ると時間ばかりかかる)。
二輪タクシーやバジャイでミクロレットが走っていそうな場所まで行き、ミクロレットから中型路線バス乗り換え、さらにトランスジャカルタに乗って市の中心部の勤務先へ向かうといった通勤経路が割とポピュラーだと聞いたことがある。
はっきりいって、多くの交通手段において日本のようにICカードなどでシステマチックに支払う方法は取られていない。今後ジャカルタがさらに発展すれば風景のひとつともいえる、バジャイやミクロレットが少なくともいまのスタイルではなくなる日も近いのかもしれない。