やっぱり新型クラウンじゃなきゃダメ! 日本のオヤジが同価格でもアウディやBMWを選ばないワケ

雰囲気は保守的でも代々先進の中身が与えられてきた

 2018年6月にフルモデルチェンジしたトヨタ・クラウンが好調だ。発売一カ月での初期受注は約3万台、7月の販売台数でも7,225台(自販連調べ)と好スタートを切っている。

 トヨタのFRプラットフォームとしては初のTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用してドイツ・ニュルブルクリンクで鍛えられた優れたフットワーク、ハイパワー版と省燃費という2種類のハイブリッドを用意しつつダウンサイジングターボもラインアップするという最新トレンドを満たした3つのパワートレインなどなど、クラウンという名前にふさわしい充実したフルモデルチェンジとなったことも、こうした好調の要因だろう。トヨタクラウン

 もっとも、こうしたスタートダッシュは新型モデルの登場前から予想されていた。先代クラウンは2013年12月の発売だったが、そのタイミングでも発売1か月の初期受注が約2.1万台となっていたから。クラウンというだけで、熱烈なファンであったり、フリートを含めた固定ユーザーが存在する。つまり、初期受注の好調さはクラウンとしては織り込み済みだ。

 トヨタとしては若返りを狙っているが、長年にわたりクラウンを買っているユーザーは浮気をしない傾向にある。だからこそ、フルモデルチェンジをしたことで、万単位の買い替え需要が発生することは容易に想像できる。しかも、12代目~14代目までは実質的にキャリーオーバーだったプラットフォームが、今回一新されたというのも、歴代のクラウンオーナーにとっては惹きになる部分だろう。

 夜間の歩行者検知が可能なプリクラッシュセーフティシステム「トヨタセーフティセンス」、世界的なトレンドを押さえたコネクティッドサービスといった最新テクノロジーもオーナーがクラウンに期待する先進性を満たしている。

 そう、クラウンと聞くと、いかにもオーソドックスな価値観を想像するかもしれないが、その歴史をたどれば、先進テクノロジーと切っても切れない関係にあることが理解できる。そうしたバックボーンがあるとはいえ、新型クラウンの価格帯は500万円~700万円。

 誰もが簡単に買い替えを検討できるプライスゾーンではないし、真剣に同価格帯で検討すれば、BMW、アウディ、メルセデスといったドイツ系ブランドの各モデルがライバルとして浮上する。それでもクラウンを選ぶのは、前述したような熱心なファンにとってほかの選択肢は目に入らないということだろう。

 その理由はいくつも考えられるが、やはり輸入車ディーラーより身近なトヨタのディーラーで扱っていることの影響は無視できない。販売拠点の数というのは実売において大きな要素で、逆にいえばクラウンがこれほど売れているのに、レクサスが苦戦している理由にもつながってくる。そうした拠点の多さというのは転居した先でのメンテナンスといった安心感にもつながるし、またリセールバリューにも効いてくる。

 600万±100万円という価格でのクルマ選びにおいてクラウンという結論は合理的でもあるのだ。なにより、「いつかはクラウン」という、かつての名キャッチコピーと、その後につづくモデルが作り出したクラウンのブランド力は国産モデルとしては圧倒的であり、プレミアムサルーンのドイツ御三家であっても、そう簡単には食い込めない。

 ちなみに、AクラスからSクラスまで、セダンからSUVまで含めたメルセデス全体の日本における販売規模は7万台足らず(2017年実績)でしかない。新車効果があるとはいえ、単月で7000台を超えるクラウンは、それ単独で輸入ブランドに匹敵するマーケットを持っている。個々のユーザーとして輸入車各車とクラウンを比較することは否定しないが、市場規模の視点からモデル同士の比較をするには、まだまだ桁が違うと言わざるを得ない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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