セレナやノートが登場! 新生ブランドの「AUTECH」は何を目指すのか (3/3ページ)

コンセプトを守りつつも車種ごとに素材を使い分ける柔軟性

 さて、ブルーに込められた素敵なストーリーを伺ったところで、セレナAUTECH、ノートAUTECHの実車を見ながらお話を伺うことにした。

 並んだ2台をあらためて眺めると、やはりパッと目を惹くのはAUTECHドットグリルの上質な輝きと、シルバーのブレードによるスタンスの良さ。足もとを引き締めるホイールからも、プレミアム・スポーティが伝わってくる。そして、確かに車種、パーツごとに少しずつ違うブルーが使われているが、全体としてはどちらも、紛れもないAUTECH BLUEであると納得させる統一感がある。

 登場したばかりのノートAUTECHのデザインにはどんなこだわりがあるのか、外観を日暮さんに伺った。

「ノートAUTECHもベースモデルよりも大人っぽいプレミアム・スポーティがテーマです。もちろんフロントにはAUTECHドットグリルを採用していますが、じつはVモーション(V字グリル)の形状も、ベース車よりもワイドに感じてもらえるよう変更しているんです。さらにメタル調フィニッシュのバンパーを入れることで、より落ち着き感や上質な印象を持たせながら、スポーティさも表現。サイドミラーやリヤバンパーフィニッシャーもメタル調フィニッシュとして、統一感を出しています」

 そしてインテリアは青山さん。

「キーとなるのはやはりAUTECH BLUEですね。コンパクトクラスということもあって、エアコンルーバーリングには少し遊び心を取り入れました。本革巻ステアリングホイールは、運転に集中してもらうために手で触れる部分はブラックを使い、下辺にブルーをあしらっています」

「そして吸い付くような肌触りや光沢にこだわった、スエード調トリコットシートにもブルーステッチを入れ、センタークラスターやシート背面などにAUTECHロゴを配しています。ベースモデルは天井がグレーなのですが、ブラックに統一したことで、よりプレミアムな空間を実現できたと思っています」

 こうして見てくると、「AUTECH」が手がけるデザインには、モダンで洗練された中にも、やはり日本人らしいきめ細やかさ、誠実さ、和を大切にする心のようなものが秘められていると感じる。ブランドディレクターの江原さん曰く、ひと昔前とはプレミアムの表現の仕方が変わってきたという。これ見よがしではなく、内側から湧き出してくるような、見るほどに使うほどに味わいが深くなるような、そうした本物感が「AUTECH」にはある。

 なぜそう感じたのかは、たとえば青山さんから伺ったこんなエピソードからも伝わるだろうか。それは、ノートAUTECHは天井をブラックにしたのに、セレナAUTECHはしなかった、その理由。

 セレナはファミリーが多く選ぶクルマであり、小さな子どもが乗ることも多いので、暗い印象になってしまうのを避けるために天井をブラックにしなかったというのだ。ブランドの哲学や決まりごとをただ貫くのではなく、お客さまにとって良くない、使いにくいと思った部分に関しては、それをやめるという潔さ、優しさ。「AUTECH」には、それがあるのだと感じた。だから私たちはそのデザインに惹かれ、親しみを覚え、ずっと一緒にいたいと思うのではないだろうか。

 世界中でここにしかない、日本発、茅ヶ崎発のプレミアム・スポーティ。そんな新生「AUTECH」ブランドはこれからも、日本が世界に誇れる名車たちを生み出してくれるはずだ。

 (注:記事内に登場するセレナAUTECHはコンセプトモデルにつき、市販車とカラーが異なります)


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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