プレミアム・スポーティをテーマに上質感を演出
次に、第一弾として登場したセレナAUTECH、第二弾として発売されたばかりのノートAUTECHでは、実際に「AUTECH」らしさがどのように表現されているのか、デザイナーの日暮さんに伺った。
「デザインのテーマはひとことで言うと、“プレミアム・スポーティ”です。外観でまず大きな特徴となるのが、車体のいちばん低い部分に採用した高輝度のシルバーです。それによって低重心、ワイドスタンスからの走りの良さを感じていただくのが狙いです。セレナではさらに、標準モデルにはないインテグレートされたマフラーをデザインにも採用することで、パフォーマンスや走りの良さを表現しています」
「そしてデザインのメインとなるのは、小さな粒をあしらったAUTECHドットグリルと呼んでいるグリルです。よく見ていただくと、小さな粒が円や楕円ではなく、立体的な五角形になっており、置かれた場所によって大きさや角度も徐々に変化していきます。これは職人がそのクルマのグリルにいちばん映えるように、1粒1粒はめ込んでいったような作り込みの丁寧さから、クラフトマンシップを感じ取っていただけると思います。また、見る角度や明るさによって、いろいろな表情に変わっていくのも特徴ですが、表面処理にダークメッキを採用することによって、引き締まったスポーティさを表現しています」
ブランドを象徴する「AUTECH」のエンブレムは、AUTECH BLUEと呼ばれる青色で一新。また、走り味もチューンしている「AUTECH SPORTS SPEC」のホイールはベースモデルのサイズより1インチ大きくして、しっかりとしたスポークのデザインに、先端部の繊細なデザインを融合することにより、プレミアム・スポーティを表現。表面処理をダークスパッタリングとして「AUTECH」ブランドらしい上質で洗練された仕上がりとなっている。
とくにセレナは、大きなボディを支えるようにホイールの面をしっかり取りながらも、繊細な表現を入れることで、「AUTECH」らしさが感じられるようになっている。そうした、ブランドとして統一されたデザインテーマを持ちながら、スポークの数などは今後登場する車種ごとにアジャストしていくという。
続いてインテリアにおける「AUTECH」のこだわりは、デザイナーの青山さんに伺った。
「インテリアでもクラフトマンシップを表現していくことに変わりはなく、イメージはいわゆるカロッツェリアです。ベースモデルより上質な素材を使い、緻密なフィニッシュにこだわっています。たとえばセレナで、本革シートやスエード調シートを選べるのはAUTECHだけ。スエードはノートにも採用していますが、しっとりと吸い付くような風合いで、赤ちゃんの産毛のように光る、AUTECHブランド専用の特別なスエードにこだわりました」。
「インテリア全体を通して、モダンだけれども冷たくならない、温もりのある仕上がりを目指しています。そこに、革新的なものや先進性がプラスされるのが、AUTECHらしさだと考えています」
さらに、外観デザインのこだわりにも登場したAUTECH BLUEは、インテリアにおいても重量なキーワードとなっている。そこには「AUTECH」にとって欠かせない、2つの意味が込められているという。
「AUTECH BLUEは、すべてのセグメントを通してテーマとなる色です。もともとは社内で”湘南ブルー”と言っていたのですが、そこに1つ目の意味、ヒストリー、ヘリテイジがあります。じつは1986年の創業時に使っていたエンブレムには青が入っていたのですが、水色から濃い青の3色でできていたんです。それは、創業の地であり今も拠点となる湘南の空や海の色からきています。そうした地域性を大事にしたいという意味も含まれるのです」
「もう1つの意味としては、革新です。青というのは、日本古来から希少性の高い色で、顔料も高いものでした。それがあるときブレイクスルーして、今ではプロダクトにおいては先進性を表現する色に進化したという流れがあります。そのように青は、希少性がありつつ革新性を想起させる色でもあると考えています」
ただ青山さん曰く、ブルーは使うのが非常に難しい色でもあるという。いくら上質な本革を使っても、そこに彩度の高いブルーを合わせると安いビニールのように見えてしまったり、一歩間違えると失敗しやすい。そのため、どこにでも1つのブルーを使うのではなく、AUTECH BLUEとして認識できる範囲の幅をもたせて、部位によって考え抜かれたブルーを使用。ブランドとしての仕上がりのレベルを統一し、すべて同じメッセージが届けられるようにしていくのが「AUTECH BLUE」なのである。