車両の環境対策がバッテリーに求める性能を高めている
クルマのエンジンをかける(電気自動車やハイブリッドカーでは起動する)ために欠かせないのが、いわゆる鉛バッテリー。乗用車では12Vとなっていることがほとんどで、車検など定期点検においてはバッテリーの電圧などを測定し、その状態によっては交換を勧められることがある。そのバッテリーの値段が上がっているという。
調べてみると、ベーシックな鉛バッテリーの市場価格は数千円台となっていて、さほど価格上昇していないようだが、ユーザーレベルでは「バッテリーの交換で1万円以上の部品代がかかった」という声もあるようだ。これはディーラーなどがバッテリーの値段を高めにしているのだろうか、いや違う。
実際、バッテリーの交換コストは上昇傾向にある。その理由は、エンジン車においても環境性能を上げるためにバッテリーへ求められる性能が変わってきているからだ。
たとえばアイドリングストップ車の場合。通常のクルマではエンジンを始動した以降は、エンジンでジェネレーター(発電機)を回すことによりオーディオやナビなどのアクセサリー類を動かしているが、アイドリングストップ中はバッテリーから電力供給をしなくてはならない。
そのため容量はもちろんのこと、耐久性や充電効率にも高いレベルが求められる。つまり、バッテリーとしては高価になってしまう要素が増える。ハイブリッドカーやアイドリングストップ車でなくとも、最近のクルマには「充電制御機能」が付いていることが多い。
つねにジェネレーターによって発電するのではなく、加速時にはジェネレーターの負荷を減らし、減速時などに動かすようにすることで、減速エネルギーを活用し、全体としての無駄を減らそうというもの。当然、燃費には有利だ。そして、こうした充電制御を行うためには、細切れにジェネレーターを動かしてもしっかりと充電できるだけの受入性がバッテリーに求められる。これも価格上昇の要因となる。
アイドリングストップ、充電制御といった燃費向上メカニズムは、バッテリーへ求められる特性を変えている。それに伴い価格も上がっているのだ。そのほか鉛バッテリーを室内側(ラゲッジスペース床下など)に積む場合は、安全面から開放型のバッテリーが使えない。制御弁式構造や一括排気構造を持つバッテリーが必要となり、こうしたケースでもバッテリーの価格が上がってしまいがちだ。