フォレスターが積むドライバーモニタリングシステムは期待大
2017年秋、完成検査において無資格者が実施していたという不適切事案が判明したスバル。その後、完成車の抜き取り排ガス検査においても規定を満たさない条件での試験結果を不正に書き換えるという別の問題も判明した。それに伴い、社長交代にまでつながるという事態になっている。
2018年7月時点では、まだ燃費・排出ガス測定に関する再調査が済んでいない状態で、すべてがクリアになったわけではない。すなわち、こうした不正を生み出した温床が何であり、どのような対策をするのかも明確になってはいない。
新しい中期経営ビジョン「STEP」において、信頼を回復することを第一に掲げ、組織風土改革も宣言しているが、その取り組みは始まったばかりである。そもそも企業風土の改革が一朝一夕でできるはずもない。中期・長期にわたって改革を進める必要があるだろう。
具体的には5年間で1500億円を品質向上のために投資するという。今回の問題は製品検査のステップで起きていたが、製品企画の段階から生産に至るまでのすべてのプロセスにおいて、イチから見直すということだ。
その一方で、スバルのクルマづくりは一足先に大きな改革を遂げている。その根幹となるのがインプレッサから採用された「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」である。そして、インプレッサ、XVにつづき、新型フォレスターも当然のようにSGPを車台として開発されている。
最低地上高220mmを確保するなど、本格クロスカントリー車に負けずとも劣らない悪路走破性を持つクロスオーバーSUVであるフォレスターが舗装路で見せるハンドリングのレベルが非常に高いのは、すでに多くの自動車評論家が評価するところ。フォレスターの伝統ともいえたターボエンジンを手放したかわりに、モーターアシストをパフォーマンスよりに利用した新発想のハイブリッド「e-BOXER」を設定したというのも注目のポイントだろう。
そして、フォレスターには新たにスバリスト(スバル車のファン)を増やすであろう可能性を感じさせる新機能が搭載された。それは、「e-BOXER」を搭載するグレードだけに設定された「ドライバーモニタリングシステム」である。ダッシュボード上のマルチインフォメーションディスプレイ部分に内蔵された赤外線カメラによりドライバーの顔を認識、居眠りや脇見運転を検知すると注意喚起するというのが基本機能。
これは運転支援システム(部分自動運転)における安全性を確保するデバイスとして提案されている。しかし、そこにとどまらず、顔認証機能を利用して、登録しておけばてシートポジションやエアコンの設定温度などを、運転席に座っただけでアジャストするといった付加価値も実現している。おそらく、多くのユーザーにとっては居眠りで注意を受けるよりもメモリー機能による利便性のほうが日常的には役立つだろう。なにより、乗り込むたびに顔を認識してクルマが挨拶してくれるというのは、機械がパートナーになった気がしてうれしい。
思えば、スバルの躍進を支える先進安全技術「アイサイト」も、もともとは衝突被害軽減システムとして開発されながら、いまでは幅広い速度域において追従クルーズコントロールや車線維持アシストを実現する運転支援システムという印象に変わっている。
現段階では「ドライバーモニタリングシステム」はフォレスターの1グレードに採用されているに過ぎないが、クルマとドライバーのコミュニケーションを強めるデバイスとして、大きなポテンシャルを感じさせる。アイサイトと同じように、ドライバーモニタリングシステムが付加価値の部分で評価されることがスバルのブランディングにつながるかもしれない。
気が早いかもしれないが、ドライバーモニタリングシステム初採用モデルとして、フォレスターが新生スバルの原点として歴史的な評価を受ける、そんな気がしてならないのだ。