アクセル操作に対してリニアなトルク特性が得られる
マツダが今回アテンザに加えた改良は幅広く多岐に渡る。まず外観はフロントのラジエターグリルがデザイン変更され、英国車・ジャガーのような迫力が与えられた。前後のバンパーも変更されているが、全体的には小変更に留まり、オーナーなどアテンザに注目していない人は気がつかないかもしれない。
クルマに乗り込むとコクピット/インテリアの雰囲気は外観以上に変わったことがわかる。クラフトマンシップを意識し手作り感覚で仕上げられたインパネダッシュやセンターコンソールなど、ステッチが丁寧に縫い込まれ質感が高い。2015年の一次改良時にもインパネデザインは大変更を受けていたが、今回さらに大幅に変更されモダンな雰囲気と操作性の向上を果たしている。
室内寸法的には変わりなく、ドライバー中心のコクピットに人間工学をさらに極めて骨盤を正立させたシートは固さ、ホールド感にも優れ腰の当たりの感触の絶妙で長時間ドライブでも楽そうだ。
エンジンを始動して走行開始。まずはSKYACTIV-Dの2.2リッター4気筒ディーゼルターボモデルだ。エンジンに関しても専門的なチューニングが施されている。緻密な燃料噴射が可能な最新のインジェクターを使用し、急速多段燃焼技術という将来的な制御技術を前倒しで導入。最高出力が175馬力から190馬力へと引き上げられた。最大トルクも420N・mが450N・mとなり力強さが増しているが、数値以上に重要視されているのがドライバビリティ。従来「ドッカンターボ」と言われるような急激な過給トルクが発揮される特性が見直され、アクセル操作に対してリニアなトルク特性が得られている。
その効果は走り始めて市街地を数kmも走ればすぐにわかる。アクセル操作に対してスムースに力が引き出され、従来のように踏み込んだアクセルを戻しながらコントロールすることがなくなった。一瞬パワーダウンしたかのようなスムーズな走りだが、全開加速では当然パワー向上分が体感できる。
次に足まわりだ。今回もっとも大きく改良されたのはサスペンションと言っても過言ではない。まず前後サスペンションスプリングのバネ定数特性が変更された。それに合わせフロントショックアブソーバー径を大径化。前後ショックアブソーバーともに飽和特性を採用してロードホールディングを高めつつ振動や衝撃の吸収性を高めている。
前後ともにスタビライザーブッシュを接着化し、バンプストッパー特性も変更するなどしている。さらにリヤショックアブソーバーのトップマウントに、ウレタンブッシュを埋めこんだアルミ製マウントを採用。これはCX-8、CX-3にも採用され順次拡大採用されている最新のパーツでマツダ車の乗り味を確立する狙いがある。
こうしたサスペンションの改良と電動パワーステアリングの制御を最適化しコーナーへのアプローチから脱出までをスムーズにライントレースし、操舵力変化にもリニア感を与えて運転する楽しさを表現しつつ操縦安定性や快適性も高めているのだ。
正直市街地の一般道を走らせた程度では大幅な進歩は感じられなかった。それはアテンザの元々の設計やチューニングが高度に完成していたからで、2012年の現行モデル登場時点ですでに圧倒的なハンドリング限界に高さを実現していたからだ。おそらく従来モデルユーザーが乗り換え、毎日使用していると様々なシーンで改良効果を実感できるはず。
次にSKYACTIV-Gのガソリン2.5リッター直4モデルも試す。このパワーユニットはすでにCX-5にも搭載され、気筒休止システムを備えた好燃費ユニットとして拡大採用されたもの。やはりドライバビリティに優れたアクセル操作にリニアに反応するチューニングが盛り込まれジェントルなパワー特性を示した。
最高出力はディーゼルターボと同じ190馬力だが最大トルクはノンターボゆえ252N・mに留まる。ディーゼルから乗り換えるとトルク不足感は拭えなが、ディーゼルと同様の遮音、防振対策が盛り込まれていて室内の静かさは高級車として胸を張れるレベルにある。高まったインテリアの質感ともマッチして完成度は確実に高まった。
アテンザのもう一つの魅力として6速マニュアルトランスミッション仕様が設定されていることも上げられる。ディーゼルモデルのみの設定だが、販売面でつねに10%程度のニーズがあると言われ、今後も継続採用されるそうだ。
このDセグメントセダン、競合はカムリHVやスカイライン、アコードHVなど強豪が多いが、マツダの個性を活かしたクルマ作りで今後の善戦を期待している。