世界が驚く高級サルーンを! 新型トヨタ・クラウンに与えられたメカニズムとは (3/4ページ)

目指したのは世界で戦える革新的なパフォーマンス

 新型クラウンは日本国内専用車としてのパッケージとするために、全幅は1800mmに抑え最小回転半径も5.3m(タイヤサイズで異なる)という取りまわしのよさを確保。ドアハンドルの高さや角度も日本人にマッチするものにしている。それでいながら走りは世界で戦える革新的な性能を目指し、狙ったラインに一発で乗せる正確でシャープなハンドリングと、低速から高速までのあらゆる状況で目線が動かないことをコンセプトとして開発が進められた。

 そこで新型クラウンには、レクサスLCやLSで開発されたTNGAのGA-LをベースにしたGA-Nプラットフォームが与えられ、パッケージデザインと走行性能と密接に関わる慣性諸元を、これまでにない次元に引き上げることが可能となった。

 TNGAの共用化では、LS用に対してサイドロッカーパネルを内側に39mm狭くし、ホイールベース長の違いではリヤのフロア部で対応。フロントサイドメンバーやフロントサブフレームはLS用を流用し、ラジエターサポートやフロントエプロン、ダッシュ部は幅が異なるためクラウン専用品を設定している。

 また先代と比べ、フロントの車軸は80mm前に出し、フード高さを13mm下げることでスポーティさと前方視界のよさを両立。重量物となる12Vバッテリーはフロント搭載からリヤ搭載にし、アルミ製のフードやフェンダーを採用することでフロント荷重の適正化を行い、前後重量配分は50対50を達成。重心高は15mmダウンさせている。このようなマスの集中化や低重心化を徹底することで、ステアリングに対する応答性が増して自然に旋回できるようになっている。ロールやピッチングといったムダな動きを起こしにくく収束性も高めた。パワートレインでも、エンジン搭載位置やマウント配置、駆動系に至るまで基本諸元の優れたレイアウトを採用でき、振動や騒音対策でも有効に作用している。

 ボディはTNGAの新骨格ボディを採用。ホットスタンプ材をフロアトンネルと両サイドのロッカーパネルをつなぐようにフロア前に横配置し、衝突時のフロア変形を抑え衝突エネルギーを効率よく伝達するようにしたほか、590MPa〜1180MPaのハイテン材も部位に応じて使い分けている。

 注目はレクサス譲りのアルミダイキャスト製フロントサスペンションタワー。厚みは3mmでスチール製のメンバーとはSPRというリベットと接着剤を併用した工法で強固に結合される。ボディのねじれ剛性は先代比で約1.6倍、フロントサスタワーの着力点剛性でも、約2.3倍と大きく向上している。

 ボディの骨格部では、環状骨格構造を採用するとともに各ピラーやロッカーパネルの結合部の剛性を上げる工夫が行われ、結合部の幅を広げたり、スポット溶接の打点拡大や接着剤の併用によって、パネル同士をガッチリとつなげている。フロントホイールアーチ内のAピラーの根元とフロントエプロンメンバーをつなぐパネルでは、カウルサイドアウターという一枚板をあて、サービスホールを極力なくした設計にすることで、ステアリングの手応えやロールフィールの改善を実施。

 さらに、クラウンで初採用となった6ライトボディでは、CピラーとDピラー部がリヤサスペンション上部となるため、強度部材であるリーンフォースと両ピラーの結合剛性を高める工夫を行い、リヤボディの剛性も上げている。

 サスペンションは「1000km翔ける!」を性能コンセプトとし、長距離でも飛翔するように走り切れる性能を狙って開発。車幅1800mmや取りまわしのよさ・扱いやすさなど日本の環境にベストマッチしたパッケージとしながら、高い静粛性・目線がぶれない乗り心地性能を実現。乗員へ与えるストレスを最小限に抑えたことに加え、ドライバーが意のままにクルマを動かせることにこだわり、操る楽しさや気持ちよさが味わえるように仕上げている。

 サスペンション形式は、フロントはLS譲りのダブルジョイント式ハイマウントマルチリンク式を採用。転舵時のタイヤ回転中心となる仮想キングピンをタイヤの中心へ寄せることで、路面入力や、制動力などの外乱に対する安定性を確保するとともに、操舵時のキングピン移動を利用してステアリングの操舵角と操舵力の関係をよりリニアにしっかり立ち上げるようにしている。

 ハイマウント式マルチリンクにより、ホイール支持上下スパンを長くすることができるので、ブッシュをソフトにしても旋回時にサスペンションが受ける横力に対しては高い剛性を持たせることが可能となった。乗心地を確保しながら、ヨー応答は従来型から向上させてシャープなハンドリングを実現。前後方向の入力に対しては大容量のブッシュによりハーシュネス特性を大きく改善している。

 ショックアブソーバーは、標準タイプはモノチューブ式の採用によってレスポンスを確保するとともに、バルブと摺動部部品による0m/s〜微低速域の減衰力特性の最適化でしなやかな乗り心地と目線が動かないフラット感を実現。さらにリバウンドスプリングによるロール姿勢改善を行っている。また、RSグレードにはリニアソレノイドバルブ方式のAVSも設定されている。電子制御により従来型に対して4倍の応答速度と連続減衰力可変機能を持ち、乗り心地と操安性の背反する性能を高レベルで両立している。


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