圧倒的販売力をもつトヨタでもトヨタブランドの軽自動車が売れない理由とは (3/3ページ)

軽を売ってもアフターサービスでの儲けが出ない!

 また、軽自動車ユーザーは購入予算だけでなく、維持費についてもよりシビアに考えるひとが多いので、“ディーラー車検は高い”などとして、メーカー系ディーラーとは関係のない、格安車検専門業者やガソリンスタンドなどで車検をメインとしたメンテナンスを受けるひとも多く、“売り切り”状態になるのでアフターメンテナンス部門の収益にも悪影響が及びやすいのである。

 ちなみにスズキやダイハツの軽自動車販売については、“業販店”と呼ばれる、正規ディーラーと新車販売の協力関係にある街のモータースや中古車専売業者のことである、この業販店での販売比率が高いので、もともと売り切りに近い販売形態が多いのである。

 販売現場で、もともとトヨタが自社ブランドでの軽自動車を扱うようになったのは、メインでクラウンやハリアー、カローラなどトヨタブランドの登録車を乗っている顧客が、トヨタに軽自動車がないからとしてスズキやダイハツ、ホンダなどの他メーカーの軽自動車に乗っているケースが多く、“それならば”と扱い始めたと聞いている。

 長年つきあいのある“馴染み客”が多いトヨタディーラーなので、「軽自動車欲しいのだけど……」と相談された時に、「トヨタにもありますよ」と切り出す程度で軽自動車をイチ押しで売っていこうという腹積もりはトヨタにはないようである。

  

 “販売のトヨタ”というぐらいなので、軽自動車の取扱いにはかなり慎重な様子がうかがえる。そのためもあるのか、ピクシスシリーズの取扱いがオールトヨタではなく、カローラ店とネッツ店をメインに、一部地域のトヨペット及びトヨタ店(軽自動車比率の高い地域で希望のあった販売店のみ)となっている。

 しかし一方でトヨタディーラーでは、ダイハツ軽自動車も購入することができる。タントやムーヴなど、ダイハツの看板軽自動車ベースのOEM車というのはトヨタブランドにはない。ダイハツはトヨタの完全子会社ということもあり、ピクシスブランドにないタイプのダイハツの軽自動車もトヨタディーラーで購入することが可能なのである。

 ダイハツの軽自動車の購入を希望するお客がいたら、協力関係にあるダイハツディーラーへ紹介するパターンがある一方で、トヨタディーラーが自社名義で一度ダイハツディーラーから当該軽自動車を購入し、そのあと購入を希望しているお客へ転売するというパターンもあるようである。つまり、トヨタディーラーが直接メーカーであるダイハツから軽自動車を仕入れて販売しているというわけではないのである。

 しかし一説では、“全国のトヨタディーラー”という大きいくくりにすると、ダイハツブランドの軽自動車を一番多く販売しているのは全国のトヨタディーラーになるともいわれているほどの販売実績を誇っているようである。

 あくまで顧客の要望に応えるということで、積極的な軽自動車についての販売攻勢はしかけていない現状でも結構な数の軽自動車を販売しているのだから、トヨタが軽自動車の販売に本腰を入れたら……。圧倒的な販売ネットワークも持っているので、一気に“軽自動車販売ナンバー1ブランド”になるのは間違いないといえよう。ただしダイハツという軽自動車メインに車種をそろえる子会社があるので現実性は限りなくゼロだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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