軽を売ってもマージンが出ないディーラーも!
トヨタ系ディーラーで聞いてみると、「弊社では軽自動車であっても受注すれば、セールスマン各自はセールスマージンがもらえますが、他のトヨタ系ディーラーのなかには軽自動車の受注に関してはマージン支給がなかったり、軽自動車だけマージンが少ないといったところもあるようです」と話してくれた。
さらに事情通に聞くと、「軽自動車でも受注すれば登録車と同じセールスマージンが支給されるディーラーでも、取り扱い車種全体でバランス良く売らないと、セールスマージン自体を支給しないという[足きり]を設けているところもあるようです」と話してくれた。
つまり、たとえば利益率の少ないコンパクトカーすべてでノルマを達成するのではなく、ミニバンやSUVなど、高収益車種と呼ばれるものも受注していないと、ノルマを達成していてもマージンを支給しないということらしいのだ。
ホンダが初代N-BOXを発表し、軽自動車のラインアップ強化に舵をきったときに、業界の一部から「ホンダはパンドラの箱を開けてしまった」ともいわれた。
ホンダ以前に日産が2002年にスズキからのOEM車となるモコを発売し、日産にとっては初めて本格的に軽自動車をラインアップすることとなった。その後も三菱eKワゴンのOEM車となるオッティや、スズキ・アルトのOEM車となるピノなどを矢継ぎ早に市場投入して、軽自動車のラインアップ拡大を進めた。
軽自動車の発売当初は日産系ディーラーでも前述のトヨタディーラーのように、軽自動車の受注に関してはマージン支給額を減らすなどしていたのだが、やがて登録車との差別化をやめてしまったと聞いている。
自動車販売の世界では、軽自動車はやはり購入予算が登録車に比べれば少なめになることから、“買いやすい”し“売りやすい”ので、セールスマンの受注内訳も売りやすい軽自動車が目立ってしまうと聞いたことがある。
現状の日産は日本市場では施策的に軽自動車、ノート、セレナ、エクストレイルに集中して積極推販を進めていることもあるようだが、軽自動車を積極的に取り扱うと、大型高級セダンなどの高額車両の売れ行き不振に陥りやすくなってしまうのである。もともと日産の大型高級セダンなどを乗り継いできたお客のなかには、日産の軽自動車が注目され店頭でも目立つようになると「雰囲気が変わった」と、日産車から離れるひとも当時は目立ったと聞いている。
ホンダもNシリーズがN-BOXを中心に良く売れているのはある意味良いことなのだろうが、日産と同じで、上級車種の販売の苦戦傾向が目立っている。ステップワゴンでさえも、“大きい”としてステップワゴンユーザーがN-BOXまで一気に代替え車種をダウンサイズしてくることも珍しくないとのことである。
いままでの登録車に代わって軽自動車が売れているだけだから問題がないようにも見えるが、取り扱うディーラーにとっては、利益率の低いクルマばかり売れていることになるので、当然収益が悪化してしまうのである。