サスペンションの変更や剛性アップの効果は乗った瞬間にわかる
「うわっ!! こんな場所でも即効で乗り味の違いがわかるモノなんだ!?」と声を大にするほど、オフロードと岩場の走行で明確な違いを見せる新型Gクラス!!
見るからに無骨で異質な雰囲気を漂わせるゲレンデヴァーゲン……いわゆるGクラスは、見た目の印象だけではなく、実際もタフネスの極みと言えるまさにヘビーデューティーなクロスカントリーオフローダーの世界基準だ。
メルセデス・ベンツを名乗る1979年から約40年、見た目はほぼ変わらず、機関と内外装に2度手を加えながらココまで来た。
アウトバーンでは空気の壁を押しのけながら200km/hを越えて突進する。そのトラックのような硬い乗り味のなかにメルセデス流の、過敏に動き過ぎない”鈍さ”が高速直進性の安定の領域として活きる。
だがGクラスと言えど、いやGクラスだから時代(次代)の要請から、燃費、排ガス規制、歩行者保護、自動化の運転支援を含む安全制御を盛り込む必要性に迫られた。
それら制御を追加するなら、もう作り替えたほうが話は早い。という事だが、愛され親しまれ続けたGクラスの特長や長所、イメージは残しつつ、さらに性能を伸ばす。と言う方法で遂に新型Gクラスの誕生である。
メーカーコメントでは「20m離れたら新旧の見わけがつけられない」。というが、日頃からGクラスに慣れない者には手に触れる距離でさえ、瞬時に新旧を見わけることは難しい。
見た目は新型もほとんど同じ、だがフロントガラスは旧型の平面から、湾曲する大幅な変更を受け、空気抵抗軽減と、ガラス面に激突する虫類にも効果的ながら、大まかなデザインとして区別がつけにくい。
Gクラス=角張った四角いハコ型から変革する必要はないし、あの見るからに頑強なカタチだからこそ根強いファンは多い。横文字職業から芸能関係、もちろんセレブリティーほかユーザー層は多岐に渡る。
新型の狙いは先の最新の環境、安全基準への対応を行ないながら、快適性を向上することである。
乗り込もうとドアを開けると……!? 軽い!! 鉄の扉がアルミ製に変わったからだが、フェンダーやボンネットも含めて軽量化の意味でアルミに変更された。さらに高張力/超高張力スチールを使いわけるボディシェルと、板厚3.4mmの鋼材をロの字に加工して使用する新開発のラダーフレームにより、フレームとボディマウントの捻り剛性は55%も向上しつつ、トータルで170kgの軽量化を実現した。
G550で新旧ボディサイズを比較すると、全長が+53mmの4817mm。全幅は+64mmの1931mm。全高+15mmで1969mm。ホイールベースが+40mmの2890mm。正面からの眺めはほぼ正方形。横からは長方形……。
試乗は新旧直接比較が叶うオフロードから。まずは旧型でコースイン。じつは旧型では、こうした路面を以前にも経験しているが、その走破性能に驚きつつも、乗り味を云々言う状況にはなかった。「トラックのようだ」と思いつつも、比較対象がないため、ドシン、バタンする振動や衝撃の受け方も、こんなモンだよなと自己完結。ある意味オトコらしい硬派な乗り味だ。
それは岩場の走行でも同様に、ゴツゴツ硬い乗り味と、障害の乗り越えをボディやステアリングに手応えとして感じながらウルトラローギヤードな1速で静々と進む。
新型に乗り換えると、まず今風の造形に変わったインパネやセンターコンソールが目に入る。Gクラスらしいかと聞かれると違う。助手席のアシストグリップバーやフロント、センター、リヤ、それぞれのデフロックスイッチが3連で並ぶのは旧型の名残。
走り始めると即「ガシャ」と敢えて聞かせるドアロック音は、旧型をご存じの方なら思わずニヤリ。コースを進むと、冒頭の驚きコメントである。フロントサスがダブルウイッシュボーンに変わった新型は、まさにセダンのように優しい滑らかな乗り味に変わる。
サスペンションを、縮み、伸び側ともフルストロークさせるモーグルでも、タイヤが浮いても軌道は変わらずステアリングの角度どおりに正確に進む。
モーグルや山登り、急勾配の下りに岩場の走破は愛車では絶対やらない行為だけに、新型が良いことがわかっても、実行しない領域。
オンロードでもクルマの性格が変わったことを実感する。やはり乗り味の滑らかさとロードノイズの類を遮断する遮音性の高さ、つまり静粛性の高さである。
恐らくほとんどのGクラスオーナーは好意的に受け取れるクルマとしての進化だろう。しかしソリッドでダイレクトな、いや武骨さこそGクラス=ゲレンデだと思う層には、いい意味で洗練された。といえるが、軟弱になった。と言いそうな気がする。何が何でもセダン風快適性を求めるのは違うな、と改めてそう感じられた新型Gクラスである。