従来のカローラ像を変えるデザインを! トヨタ新型カローラ スポーツのデザイナーにインタビュー (1/2ページ)

歴代随一のスポーティさといつまでも愛せる大人のデザインを!

 1966年に初代が誕生し、2016年には50周年という節目を迎えたカローラ。2001年まで33年間連続で国内年間販売台数の首位を維持し続けるなど、まさに日本の「国民車」だ。そんなカローラの12代目の先駆けとして新型カローラ スポーツが登場。その外観は、歴代モデルのなかでも随一のスポーティさと力強さを感じさせるデザインとなった。

 エクステリアのデザインキーワードは「シューティングロバスト」。シューティングはスポーツクーペの要素を持つ勢いのあるスタイルを、そしてロバストは強くたくましい様を意味する。プロジェクトチーフデザイナーを務めた宇角直哉さんはコンセプトについて次のように説明してくれた。

「ひとつ上のクラスのような骨格のたくましさと、大人4人が余裕を持って乗れるしっかりとしたキャビン、そして、端正さのなかにもスタンスのよさと勢いのある凝縮したボディで魅せるアクティブさ。それが新型カローラ スポーツのエクステリアで狙ったものです。今回はとくに若いお客さまにも訴求できるデザインを目指しました」

 若いユーザー層に向けたデザインと聞けば、キャラクターを立たせた強烈な印象のデザインといった方向性を連想するが、新型カローラ スポーツのエクステリアは、どちらかというとムダな装飾性を排除して基本のフォルムでしっかり見せようというデザインに思える。

「ご指摘のとおり、確かにキャラクターの強い刺激的なデザインのほうが、ある意味、若い人たちにとってわかりやすい魅力になると思いますし、またデザイナーにとってもそのほうが作りやすいんです。ですが、われわれとしては若いお客さまにカローラと長く付き合っていただきたいという強い想いがありました。流行に左右されることなく息の長いパートナーとしていつまでも乗っていただける、そんなデザインにしたいと考えたんです」

 とりわけ塊感の表現にこだわったと語る宇角さん。その表現を突きつめるために、ふだんのデザイン開発では使用しない40%スケールの立体モデルを作製し、検証・検討を重ねたという。今回のデザイン開発に、トヨタの米国デザインスタジオ「キャルティ」から参画した松本知憲さんは次のように語る。

「日本のデザイン開発では、スケッチから20%スケールの立体モデルを作り、そこで検証・検討したのちに1分の1スケールのモデルを作製します。ですがキャルティでは、40%スケールのモデルを使うことが多いんです。メリットは塊のバランスを大きなスケールで確認できることです。タイヤにどんなふうにウエイトが乗っているかといった全体のリズムやバランス感、軽快感、塊感などをしっかり検証・検討できます。この40%スケールモデルのおかげで、全体の凝縮感のバランスや、立体のリズム感などの最良のポイントを見つけることができました」

 日本国内のトヨタの一般的なデザイン開発では、スケッチから20%スケールの立体を起こし、そののちに1分の1モデルを作製するという手順を踏むことが多い。だが、20%スケールではデザインの狙いを明確にするために面や線などがいくぶん誇張されて作られることが多く、1分の1スケールに移行したときのイメージのかい離が大きいというケースも少なくない。

 しかし今回は、当初から塊感を重視するという方向性が明確だったため、40%スケールモデルを使うことで、狙いどおりの塊感を最後までブレることなく追い求めることができたという。

「長く愛せる大人っぽいデザインを実現させるために、今までやったことのないようなテーマにもチャレンジしました。たとえばサイドビュー。水平軸を通してカローラらしい端正さをしっかり出しながら、ハッチバックならではの走りの楽しさを予感させる躍動感も両立させたいと考えました。そこで考え出したのが、ドア断面のピーク(外側にもっとも出ている部分)の表現です。ふつうはドア断面のピークのラインはそのまま水平に抜けていくんですが、新型カローラ スポーツではピークをリヤタイヤに向けて斜めに走らせ、それがボディ軸として感じられるような表現にチャレンジしています」

「加えて、シャープなプレスラインを持つショルダーのキャラクターラインが前方に突っ込んでいく軸を描くことで、従来とは違うアクティブさが出せたと思っています。こうした新しいテーマへのチャレンジは、やりすぎることなく、それでいてしっかりと個性と魅力が感じられるデザインを作るために必要なことでした。非常に苦労しましたが、カローラスポーツをデザインするやりがいでもありました」(宇角さん)

 リヤまわりの立体感表現も、苦労したポイントのひとつ。立体的な意匠を採用するために樹脂製のバックドアの採用が当初から計画されていたが、これほど立体的な樹脂バックドアはトヨタとしても前例のないものだった。この部分について、エクステリアデザイン担当の沼田英之さんはこう振り返る。

「樹脂製のメリットは、鉄板に比べて成形性の自由度が高いことです。とはいえ今回はかなり深いラウンドがあり、いまだかつてない絞り込みの深さもありました。そのために成形機自体も大きくなり、成形上の収縮も鉄板とは比べものにならないほどの度合いでした。強度についても課題をクリアする必要があり、また、これだけ立体的なバックドアをいかに精度よく組み立てるか、さらには止水性や遮音性の課題など、すべてが高いハードルへのチャレンジでした。生産技術の担当者とシミュレーションを重ねながら、最後の最後まで調整を重ねて実現させたんです」


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