1mmにとことんこだわって、泥臭く議論する
開発責任者の布目さんは、今回の開発でもっともこだわったことという質問に、「すべてをやり切ること」と答えてくれた。
「安全や走りの性能はもちろん、乗員の配置や荷室などのパッケージングや新型プラットフォームの使い方、快適性、静粛性など、あらゆることにこだわり抜きました。どの点についても高いハードルを設定して臨みました。たとえば荷室の開口幅の1300mmという寸法は、このクラスのクルマでは絶対にこれ以上できないだろうというサイズを狙ったものなんです。開口部を拡大する一方で、フェンダーの厚みをしっかり取って、見るからに信頼できるデザインも両立させています。開口部を大きく取ることとフェンダーを厚くすることは、言わば二律背反とも言うべきことで、これもまたハードルの高い目標です。こうしたことが実現できたのは、チーム全員が目標を共有したチームワークの強さがあったからだと思います」
さらに、只木さんが次のように補足してくれた。
「スバルのクルマづくりは現場と現場が顔を直接合わせて議論するのが特徴のひとつだと思います。お互いがダイレクトに意見を交わし、ぶつけ合う。たとえば視界について言えば、現場で実物を作って、デザイナーだけでなく、実験、設計や企画の部署など、みんなが集まって乗ってみます。そしてここがあと2mmほしいとか議論しながら何度も何度も修正を加え、全員がこれなら大丈夫と納得できるまで追い込んでいきます。1mm1mmの決め方がすごく泥臭いんですよ(苦笑)。私がスバルに入社してからこれまでに、技術はすごく進化していますが、クルマづくりの、姿勢の根っこの部分はまったく変わっていませんね」
布目さんの「すべてをやり切ることが最大のこだわり」という姿勢は、こうしたスバルの土壌があるからこそと言えそうだ。インタビューの最後に、これからオーナーになるかもしれない読者に向けて、布目さんからのメッセージを伝えたい。
「走ることが好きなお客さま、日常の買い物でよく使うというお客さま、休日のアウトドアレジャーの楽しみの相棒として使いたいというお客さま。そんなふうにどんなアプローチから接していただいても、しっかりと進化が感じられ、新たな発見ができるクルマに仕上がっています。実車に触れていただければ、我々の想いや作り込みの細やかさなどを、さらにおわかりいただけるはずです。ぜひ一度、実車をご覧になっていただきたいです」
自信に満ちた笑顔で語ってくれた布目さん。その表情からは、心からやり切ったというエンジニアの充実感が伝わってきた。