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新型トヨタ86が登場も30年以上前のAE86(ハチロク)が超絶人気を誇るワケ

新型トヨタ86が登場も30年以上前のAE86(ハチロク)が超絶人気を誇るワケ

街中から峠までマルチで熟せる1台

 現行のトヨタ86/スバルBRZが登場してから早6年。新時代のハチロクも多くのユーザーに支持されているが、一方でいまだに旧型のハチロク=AE86の人気も根強いものがある。30年以上前の大衆車(カローラ)ベースのスポーティカーが、なぜファンが途絶えないのか考えてみたい。

 漫画「イニシャルD」の主人公の愛車として活躍したというのはもちろん大きな要素だが、その「イニシャルD」も連載終了からは約5年……。速いクルマでも特別カッコいいクルマでもなかったのに、AE86に惹かれる理由はずばり「気軽に乗れて、気軽に飛ばせた」からではなかろうか。

「AE86」とくにハッチバックモデルはラゲッジスペースが広く、ハチロクが一台あれば海にも行けるし、スキーにも行けてレーシングカートやキャンプ道具も一式積めた。オマケにタマ数が多かったこともあり中古車も安く、大学生でもバイトで購入できて、走りに行ってぶつけたら修理費より“箱替え”のほうが安かったほど。

 そんな使い勝手の良さと手軽さから、肩肘張らずに乗れたのがAE86のよさだった。モータースポーツでも、グループAレース(ディビジョン3)をはじめ、ラリーやダートラ、ジムカーナといった全カテゴリーで活躍した。

 あこがれの存在というより身近な存在。土屋圭市さんのドリキン伝説に影響されて、ハチロクで峠を走る人も多かったが、LSD+ブレーキパッドぐらいのライトなチューニングで、メンテナンスもDIYなんて人が多かったはず。

 メカニズムはシンプルでエンジンこそDOHCの4A-Gだが、サスはフロントがストラット、リヤは5リンクリジッドアクスルで、基本はアンダーステア気味だがテールを流すのは簡単。しかもそのテールスライドを収束させやすいのが魅力。なにより車体が軽く(980kg)、FRだったのがよかった。

 飛ばしてもたいして速くはない。ケツも振るけど危なくない。荒っぽく走らせるけど、雑ではない。レギュラーガソリンで燃費も良く、タイヤも大して減るわけでない。どこか大味なんだけど、たくさん走り込むうちに、自然とドラテクも上達する。多くの人が乗っていたのでアドバイスも受けやすかった。

 こんなハチロクと比べると、いまのスポーツカーはシャキッとしていて出来はいいんだけど、洋服でいったらフォーマルな感じで、いつも“ちゃんと”と乗らなければいけないような気がして……。

 筆者も、TE71レビンからAE86トレノに乗り換え、ハチロクで育った世代。あのハチロクの大らかさ、ゆるさは、いまのクルマでは味わえないと思っている。遊び道具で、仲間でのようなクルマ、まさに相棒的存在で、大事にしすぎることもなく、ずっと一緒にいても気疲れしない、そんな稀有なキャラクターがAE86というクルマで、こうしたクルマは後にも先にもハチロク一台。

 あのゆるさ、たぶん狙って設計できるものではない。一度ハンドルを握った人なら、縁があればもう一度乗りたい、もう一度所有したいと思わせるフレンドリーなスポーツカー。名店の味ではないけど、ときどき無性に食いたくなる街の中華屋のラーメンやチャーハンのような存在なので、タマがある限りファンは一定数のファンは途絶えないだろう。

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