2代目に似たのは機能美を追求した結果! 新型スズキ・ジムニーのエクステリアデザイナーにインタビュー (2/2ページ)

軽自動車の枠に収めながら厚みを持たせた

──企画開発の段階では、どのようなデザイン案があったのでしょうか?

砂走:数案ありましたが方向性はみんな一緒でした。全部ピラーが立っていて、フードが長かったですね。違ったのはホイールアーチの形状が丸型のものと、採用案の台形がありました。 また、リヤコンビランプの位置が採用案はバンパーに内蔵されていますが、バンパーより上の外側にある案もありました。それは被視認性が高く、かつバックドアの開口幅を犠牲にしないという狙いだったのですが、コスト的に厳しいのでバンパー内蔵型が選ばれ、被視認性はハイマウントストップランプで確保ています。

──その中で今回のデザインが選ばれた決め手は?

砂走:ベルトラインがクランク状、ホイールアーチが台形、リヤコンビランプがバンパー内蔵型で開口部大きいことですね。どれも選びづらいくらいに評価されたのですが、もっとも機能的だったので採用案が選ばれました。その案に決まってからは軽のジムニーから開発したのですが、迷わず進んでやり直しもなく、いかに軽自動車の枠に収めながら厚みを持たせるように作り込むための時間を長く取りましたね。

──スケッチしたデザインを実車で実現するうえで苦労したポイントは?

砂走:ああいう平らなドアやプレスすると引けたり伸びたりします。ですので、設計者も生産技術の方も皆さん協力してくれて、意識を早い段階から共有できました。またカウルパネルも、樹脂ではなく鉄板にすることに最初からこだわりました。

──衝突安全のことを考えると、角が立ったデザインは非常に厳しいように思えますが……。

砂走:かなり厳しいですね。カウルパネルは歩行者が衝突した際にガラスへ頭が当たらないようにするなど、歩行者保護の要件はとくに頑張りました。成形性や歩行者保護のことを考えれば樹脂製にした方が簡単なのですが、最初から鋼板製にこだわっています。

──ドリップレールやサイド面を立たせる造形は、衝突安全性能もさることながら、横風や風切り音、空気抵抗などへの対策も難しくなるように思います。

砂走:そういった面はジムニーだから許される所でしたね。ジムニーは軽自動車と言いつつ、ジムニーというひとつのブランドですから、機能に徹するという作り方でいいのではないかということで、車重が重くなるラダーフレームを使ったりしましたが、それでも燃費は歴代ベストまで改善しています。

──既存ユーザーからは新型のエクステリアデザインに対しどのような要望があったのでしょうか?

砂走:3代目は評判が良くなかったんですね。丸みを帯びているので室内が狭く、ホイールアーチの出っ張りもあって荷物を積めないという声があって。新型は荷室容量を確保するため、機能優先のデザインにしました。3代目の開発当時は2代目に対しファッショナブルに、乗用車的な方向に行くのが根底にあったので、それはそれで間違いではなかったと思うんですけどね、時流に乗っていましたし。

──エクステリアデザインにおいて、他に機能面でこだわったポイントは?

砂走:バンパーを着色樹脂にしたこともそうですね。塗装バンパーは傷がつくと塗り直すのに数万円かかるので、絶対にやめようと。林道を走ると傷がつきますからね。また、バンパーの下端を切り上げることで、バンパーの下側をヒットしにくいようにする工夫も盛り込みました。 シエラはオーバーフェンダーも無塗装にしていますが、そのおかげでシエラがより立派に見えるという声は多いですね。なお、バックドアが新型も横開きなのは、スペアタイヤを背負ううえで構造をシンプルにできるということからです。

──機能最優先で作られていることが一目見て分かるエクステリアデザインに仕上がっていると思います。ありがとうございました。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
-

新着情報