トレンドを意識したデザインとは真反対の方向を向いた
7月5日、20年ぶりに世代交代し4代目へと進化した“世界最強のオフローダー”スズキ・ジムニー。2代目以前に原点回帰した感の強いエクステリアデザインについて、四輪デザイン部エクステリア課の砂走和人(すばしり・かずと)さんに聞いた。
──新型ジムニーにはとくに2代目のモチーフが多く取り入れられているように思えますが、その理由は?
砂走:2代目をリスペクトしようということはまったく考えておらず、「機能に徹する」ということと、「飾らない潔さ」をデザインテーマとしています。そうすると2代目に近づいてくるんですよね。我々のなかでも、デザインが出来上がったあとに「2代目に似ているね」という話はよく出ていて、偶然ながら2代目も機能優先で作られた結果そうなったのではないかと思いますね。
3代目はスタイリッシュな方向に振られているのですが、90年代はそうした乗用車的志向がトレンドでした。新型は、企画の段階からプロの道具として機能を優先するという話でしたが、本格的に機能を追求すると、一般のお客さまにもその飾らない潔さが響くのではないでしょうか。 つまり、本物をきちんと作れば、当然ロングライフにもなりますし、飽きられることもないですから、トレンドを意識したデザインとは真反対の方向を向いています。そういう意味では、開発中も方向性が揺れ動くことなく、一気通貫にデザインできました。
──ハスラーとクロスビーが誕生したことで、新型ジムニーのエクステリアデザインをより機能に徹することができるようになりましたか?
砂走:それはありますね。ハスラーとクロスビーがSUV風ファッションカーとして女性に響くよう狙ってデザインしていますので、それを横目に見ながらデザインしました。新型ジムニーは女性にウケようとは毛頭考えていませんが、そう作るとかえってそういう志向を持つ女性にも気に入られることはわかっていますので、そういう方たちにも見ていただけると嬉しいですね。
ボディカラーも、何層もコートして、どれだけきらびやかに見せるかを争うのがトレンドになっていますが、新型ジムニーはそれとはまったく異なり、目立たせるための色と目立たないようにするための色という2通りの機能からバリエーションを設定しました。
新型ジムニーは物事の考え方がシンプルなので、そういった所も響いてくれると嬉しいですね。 とくに働いている人で、どうしても雪山に入らなければならない場合は、ボディカラーが白では目立たないので、目立たなければならない場合はキネティックイエローを選んでいただけるとすごく嬉しいですね。
カラーデザイナーも、そうした意図をユーザーが理解したうえで選んでくれることを願っていますから。 新色はキネティックイエローとジャングルグリーンですが、ミディアムグレーはアルトのバックドアに使われている色で、ジムニーに似合うだろうと思って採用しました。シフォンアイボリーメタリックもほかの車種で使われていますが、これはユニセックスに好まれるのではないかと思いますね。