AT車の回転計は運転者の興味や好奇心を満たすためのものだった
本来は不要なものであるのにもかかわらず、一部の消費者がミニバンのAT車にエンジン回転計を求めたのはなぜだろう?
エンジンは、変速機を持たないと満足にクルマを走らせることのできない原動機だ。そこで、手動の変速機(MT)を使っていた時にはエンジン回転計が必要だった。その後、AT車が圧倒的に普及したあとも、エンジン回転計を見慣れた消費者は、それがなくなることに寂しさや、場合によったら不安も覚えたのだろう。
人は、何か動きに変化があるとき、それがなぜ、どのようにして起こるのかを確認したくなる。たとえば、ハイブリッド車にエンジン回転計はもちろん不要だが、一方で、エンジンとモーターがどのように働いているかを確認したくなり、そのためモニターでエンジンとモーターの作動状況を確認できるようにしている。本来であれば不要な表示だ。
しかしそれがあることにより、ハイブリッド車を運転しているというある種の満足が得られる。あるいは、モーターをできるだけ活用する運転操作を習得し、燃費を向上させようといった好奇心も満たされる。AT車のエンジン回転計も、そうした運転操作の喜びの中に潜むある種の興味を満たす効果はあるかもしれない。
一方で、電気自動車(EV)になれば、加速の際の変速といった変化はモーターでは起こらない。EVは変速機を持たないからだ。しかしながら、エネルギー消費と回生の関係は、興味の対象になる。そこで、エネルギーメーターのような表示が装備される。
人は、何だかの変化を目で確認したいと思う本能がある。情報の約90%は目からと言われるゆえんであろう。したがって機能面では不必要な物でも、人は興味や好奇心を満たすため余計な物でも欲しくなるのである。