たとえ機械的に超えていてもポジションを奪うことは難しい
ついに発売となったカローラ スポーツのプロトタイプ試乗会が、発売前に著名ジャーナリストなどを対象に開催され、高い評価を得ているようです。カローラという名前からいかにも特徴のない、いい意味での「80点主義」なクルマを想像しがちですが、アグレッシブなスタイルとなることで生まれ変わったことを主張する新型カローラは、走りの面でも高くレベルへ進化したと評価されています。
そうなると、長らくCセグメントにおけるベンチマークといわれているフォルクスワーゲン・ゴルフを超えているのかどうかが気になるところでしょう。しかし、少なくとも日本の自動車メディアにおいて、ゴルフを超えることは難しいチャレンジだと言わざるを得ません。日本においてカローラは高齢ドライバー向けモデルというイメージもありますが、グローバルに見れば、カローラというのは世界で一番売れているクルマです。
2017年のデータでいえば単独車種(同じ名前のモデル)として販売台数が100万台をこえている唯一のモデルなのです。ちなみに、カローラに続くのがホンダ・シビックで、3位がゴルフ。世界的なSUVムーブメントと言われることも多いが、数字でいえばオーソドックスなCセグメントモデルがセールスのトップ3を占めているのです。
そして、実際にカローラが販売台数でゴルフを上まわり続けていても、ベンチマークと呼ばれるのがゴルフであるということは、そこには機械的な進化だけでは超えられないブランド力の違いがあることを示しています。
ブランド力の構成要素には機械的な優秀さもありますが、伝統など一朝一夕には逆転できない要素も含まれています。つまり、同じ方向性で進化させていくだけでは、たとえ機械的な優秀さで超えていても、方向づけた存在(=ベンチマーク)としての座を奪い取ることは難しいのです。
新型カローラの評価が高いといっても、それが旧来からの評価軸の範囲内である限り、やはりベンチマークとしてのポジションは従来通り、すなわちフォルクスワーゲン・ゴルフであることは変わりません。ライバルにない、新しいスタンダードを生み出してこそベンチマークになれますが、スタンダードというのは伝統に裏付けられている面がありますから、急に変わることも考えにくいものです。
ひとつひとつの評価ポイントにおいてライバルを超えることができたとしても、その基準を生み出した存在がベンチマークとして評価される限り、そう簡単にベンチマークたるゴルフのポジションを奪うことはできないでしょう。