ランエボとパジェロを融合!? 三菱エクリプロス クロスを担当したデザイナーのこだわりとは (3/4ページ)

垣根を越えた連携と、揉めてでもいいモノを作るという強い意志

 インテリアのデザインでも、エクステリアに負けない表現の可能性への追求が行われている。たとえば、前席を包み込んでくれるシルバーの加飾。表面を単純な平板形状とせずに抑揚変化を付けることで、シルバーの端正な輝きだけでなく、光と影の美しいグラデーションももたらされている。この見え方のトライ&エラーでは、デジタルモデルによる検証が多用された。担当した加古尚希さんは次のように語る。

「ハイライトのチューニングでは、ほんの1mmの違いでも見え方が大きく変わってきます。リアルなCGを製作して、それを回転させることで光の当たり方の変化を検証するんです。CGも実物大で検証できるよう、大きなモニターに映します。このほか、金属を削り出したようなソリッドな表現にもこだわりました」

 また助手席ダッシュボードのアッパー部とロア部を分割しているシルバーの長い加飾部品は、途中で分割されていない大きな一本モノとなっている。インテリア担当の中屋裕史さんにお話を伺った。

「これだけ大きく、複雑な形状の部品をインパネとコンソールのふたつにわたって組み付けるのは至難の技です。じつは最初のデザインモデルのときも作りづらいから分割していたほどなんです。目立つ位置にありますから、部品の精度が悪かったりすると、質感を上げるどころか、かえって大きく損ねてしまう原因にもなりかねません。ですが内装設計の担当者が、『ここを分割したら美しさが台無しでしょう』と、向こうから提案してくれたんです。自主的に光造形で試作モデルを作って、組み付けのトライまでやってくれた。そういう目に見えない努力が、このクルマには至るところにあるんです」

 見た目の美しさだけでなく、触り心地も徹底的な追求が行なわれている。インテリアデザインを担当した宮崎真一さんは次のように振り返る。

「人が直接触れる部分についてはとくにこだわりました。ドアハンドルのような握る部品は、何度も何度もクレイモデルを削り直すことで握りやすい形状に追い込みました。ダイヤルのようなスイッチも回転のトルクにこだわりましたね。こうした試行錯誤が新しいデザイン戦略のデザインアイデンティティのひとつである『三菱タッチ』に繋がったんです」

 小さな部品のひとつひとつに至るまで真摯に質感を追求する。磨き上げられた部品たちは、お互いの相乗効果によって全体のクオリティを引き上げる。新型エクリプス クロスのデザインは、まさにその積み重ねで生み出されたものと言えるだろう。デザインのまとめ役である岡本さんはインタビューの最後にこんなことを話してくれた。

「あらゆる部署が垣根を越えて連携して、ときには揉めてでもいいものを作っていくという楽しさ。それが今回の開発で自分の一番思い出深いことです。いろいろな人たちの組み合わせによって、自分のレベルやスキル以上の高みに上がっていく。そんなプロジェクトだったような気がします」

 その言葉は、ひとつひとつの部品の相乗効果で全体のクオリティをさらに上げている新型エクリプス クロスにも通じる姿だ。真摯に作り上げられたこのクルマのデザインは、まさに今の三菱自動車そのものの姿なのかもしれない。


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