大容量かつ25年のデータ保存を可能にした
いまや自動車は電子制御の塊となっている。エンジンやトランスミッションといったパワートレインの制御はもちろん、衝突被害軽減ブレーキや追従クルーズコントロールといったADAS(エーダス=先進運転支援システム)も広く普及している。当然、制御プログラム(コード)も大きくなっている。初期のインジェクションエンジンが使っていたプログラムのサイズはKB(キロバイト)単位だったが、いまやMB(メガバイト)を超え、GB(ギガバイト)に達しているほどだ。
それだけのプログラムを安定して動かすことが、安全なドライビングにつながっているのだ。当然、クルマというのは温度や衝撃の面でメモリなどには厳しい状況にあるため、特別なノウハウが必要なジャンルになってくる。
そうしたプログラムを書き込んでおくのに使われるのがNOR(ノアと読む)フラッシュメモリ。そして車載用カテゴリーのNORフラッシュメモリにおいてグローバル市場で65%ものシェアを有しているトップ企業が、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼに本社を構えるサイプレス セミコンダクタ社(以下、サイプレス社)だ。
そのサイプレス社から新世代のNORフラッシュメモリ『SEMPER(センパー)』が登場する。ローンチは2019年だが、それに先立ち日本においても発表会が開催された。登壇したのは、日本サイプレスの代表取締役社長である長谷川夕也さんと、サイプレス社でメモリ製品事業部のエグゼクティブ バイスプレジデントを務めるサム ジャハさんのふたりだ。
サイプレス社のビジネスは自動車メーカーやサプライヤーを対象としたB to Bのため一般ユーザーには関係のない話と思いがちだが、新型NORフラッシュメモリ『センパー』の進化ポイントは、もちろんエンドユーザーのメリットにもつながるものだ。アーキテクチャの概念図などを見ると難しいように感じるが、シンプルにいえば『センパー』の特徴は、機能性と耐久性という、相反する要素を両立させたことにある。さらに安全性も高めている。
もう少し具体的にいえば、100万回以上の書き込みを保証すると同時に、25年のデータ保存を可能にしている。さらにデータの改ざんがないよう確認する機能も搭載されている。エンジン制御が複雑になり、またADASのようなプログラムの不良が危険に直結する機能も積まれている最新の自動車において、プログラムを安全かつ確実に保存できる能力は、欠かせないといえる。サイプレス社のNORフラッシュメモリ『センパー』は愛車を長く使っていくために重要なデバイスとなってくれるはずだ。