エアバッグや自動ブレーキのように保険料が安くなることはない
事故をはじめ、さまざまな交通トラブルの自衛手段としてドライブレコーダーの普及が拡大している。一説には、年間の販売数は200万個を超えるというほどだ。とはいえ、日本における四輪車の保有台数は約7800万台。本格的に普及しはじめてまだ5年程度と考えると、一般ユーザーへの普及率は1割前後といったところだろう。
価格帯としても何千円レベルから何万円級まで豊富だ。単純にカメラで映像を録画するだけのものから、加工ができないような専用ファイル形式を使うもの、前方の障害物などを認識して衝突が予想されるときに警報を発するタイプまで、用途や予算に応じて選ぶことができる。また、純正アクセサリーとしてディーラーオプション設定されることも増えており、なかにはナビゲーションと連携するタイプも出てきている。
さて、せっかくお金をかけてドライブレコーダーを取り付けて、万が一のアクシデントの証拠映像が撮れるようにしたのであれば、自動車保険にもポジティブな影響があってしかるべしと思いたいだろう。
しかし、車両自体の機能である衝突被害軽減ブレーキは割安になることもあるが、ドライブレコーダーを付けているからといって保険料が下がることは、少なくとも一般ユーザー(ノンフリート契約)にはないというのが実情だ。
むしろ、損害保険会社が用意する専用ドライブレコーダーを年間1万円前後のコストをかけてレンタルするという、保険料が上がる方向でのオプションが用意されていたりする。もっとも損害保険会社の専用ドライブレコーダーは、一定以上の衝撃を検知すると自動的にセンターや家族などに連絡が届く自動通報機能や、警備会社の駆け付けサービスといった、付加価値のあるサービスという位置づけとなっている。
そもそも衝突被害軽減ブレーキなどの先進デバイスやSRSエアバッグなどの安全装備は、交通事故や被害を軽減することが期待できるため、交通事故による保険金の支払いが減ることにつながる。つまり保険料を下げるインセンティブになりえる。
しかし、ドライブレコーダーというのは事故が起きた際の責任を明確にしやすいというだけであり、保険金の支払いを減らす効果は少ない。単一のケースでは支払いが減るケースがあったとしても、全体として事故件数や被害状況が改善されなければ、保険業界全体としての支払い額が減るわけではないからだ。
というわけで、自動車保険料に対する明確なメリットがあるとはいえないドライブレコーダーだが、当然ながら個々人のケースにおいて自分に有利な情報となることがあるデバイスであることは間違いない。なにもなければ、数万円の投資が無駄になってしまうと感じるかもしれないが、カーライフにおいて無事であることに越したことはないといえる。