大排気量V8は減ったもののエコカー全盛とはならない
「最近、ハイブリッド車の販売はまあまあといったところだ。なにせ、アメリカ人は現実主義だからね」。カリフォルニア州にある日系メーカーのアメリカ人の役員が、そうぼやく。
アメリカではハイブリッド車などエコカーの販売台数は、ガソリンの小売価格に見事に連動する。アメリカのガソリン価格は、ガロン(3.785リッター)単位で価格表示されるが、それが3ドル台、そして4ドル台と、大台を超えるタイミングでアメリカ人のエコカー購買力に火がつく。これが、アメリカ自動車業界での常識になっているのだ。
そんなアメリカ人にとって、アメ車自体がエコカー化していることに対して、どう感じているのだろうか?
そもそも、アメリカにおけるエコカーの原点は、70年代のオイルショックと排気ガス規制マスキー法によって登場した小型な日本車たちだ。その代表格が、CVCCエンジンを搭載したホンダシビックだった。排気量6リッター級のアメ車がどんどん死滅していくなかで、アメリカでの日本車人気が急上昇し、そうした流れが80年代での続いていった。
ところが、90年代中頃になると、フルサイズピックアップトラックの乗用化と、ピックアップトラックの車体を共有するSUVのブームが到来。これでアメ車の元気が復活した。2008年のリーマンショックを過ぎてアメリカ経済が復調すると、ピックアップトラックとSUVの販売台数はさらに伸びてアメリカ市場の中心となった。
そんな大型なアメ車で起こったのが、V8からV6ターボへのエコカー化だ。長年に渡りフルサイズピックアップで最大シェアを誇るフォードF150が、その口火を切ったのだ。
「V8じゃなきゃ、アメ車じゃない」。そんなアメリカ人の概念が徐々に変わり始めている。
一方で、アメリカで販売量が多いセダン市場でのエコカー化はあまり進んでいない。それどころか、最近は小型セダンからボディサイズの大きい中型SUVへの乗り換え需要が増えているのだ。
自動車メーカーとしては、ヴィッツ、フィット、そしてデミオ(マツダ2)のような、エコな日系コンパクトカーをアメリカでもっと売りたいのだが、アメリカ人の考え方とは、どうもマッチしない。荷物がたくさん積めて、家族でわいわい乗れるSUVの人気が高まるばかりだ。
このように、アメリカ人のエコカーに対する意識は日本人とは大きく違う。今後、ガソリン価格が急激に上昇しない限り、アメリカ人はアメ車のエコカー化を素直に受け入れるとは思えない。