ドライ路面でも制動距離が伸びるというデータも
タイヤの溝は排水性と密接な関係があり、溝が減ってくると雨天の駆動力、制動力が低下してくるのはご存じの通り。だとしたら溝の減ったタイヤでも、晴れた日に限れば使用し続けても問題ないのでは? と思う人がいるかもしれないが、溝のないタイヤは晴天でもNGだ。
保安基準でタイヤの使用限度は残り溝1.6mmと規定されているため、それ以下のタイヤでの走行は法律上許されていない。性能だけで考えてもタイヤは新品時が一番グリップ力に優れ、走行するにしたがってグリップ力は低下していく。JAFのテストでは、タイヤの山が2部山になると、新品(10部山)に比べ、ドライ路面でも約10%制動距離が伸びるというデータがあるぐらいだ。
また、溝が減るということは、それだけ長時間タイヤを使用したということ。時間の経過で溝の深さの問題だけでなく、ゴムの硬化も影響してくるので、残り溝の少ないタイヤの性能低下はドライ路面に限ったとしてもかなりの大きいといえるだろう。
ましてや雨までいかなくても、湿った路面でもその影響は無視できない。事実、湿潤のアスファルトでの比較では、タイヤの溝の深さが3mm以下になると急激に制動距離が伸びることがわかっている。日本の年間降水日数は、全国平均で117日。ざっと3日に1度雨が降り、天気予報が外れたり通り雨や夕立、ゲリラ豪雨などのリスクを考えると、やはり晴天限定で溝のないタイヤを……というのは現実的ではない。
タイヤは消耗品と割り切って自分と周囲の安全のために溝が減ってきたら、できるだけ早くフレッシュなタイヤに履き替えた方が賢明だ。