さまざまな価格帯のニーズに応じるのがトヨタの役目
欧州から始まったクルマの電動化トレンド。しかし、電動化といっても100% EVになるという意味ではなく、マイルドハイブリッドやフルハイブリッドも含めた電動化だ。そうなるとハイブリッド大国といえる日本市場というのは、世界的トレンドの先を行っている存在という見方もできるだろう。
そんなハイブリッド・トレンドを生み出し、引っ張り続けているのがトヨタだ。1997年に世界初といえる量産ハイブリッドカー「プリウス」をデビューさせて以来、着々とハイブリッドカーを増やしてきた。いまや国内向けだけで18車種ものハイブリッドカーを用意している。
その中でも売れているのはプリウスとアクアというハイブリッド専用車だ。販売網の違いもあるので単純比較はできないが、ハイブリッド専用が、これほど売れるのであれば、内燃機関だけのクルマをラインアップから外してもよさそうなものだ。
実際、トヨタはグローバルにみても2030年までに販売台数の半分程度を、ゼロエミッション車100万台以上を含めた電動車にすると宣言している。さらに2025年までには全ラインアップにハイブリッドを用意するという発表もあった。
まさにハイブリッドを軸とした電動化戦略をとっているといえるわけだが、上記の目標を逆の視点から見れば、2030年時点でも販売台数の約半分は純粋な内燃機関車が占めるということだ。
なぜ、これほどハイブリッドカーなどの電動車両に注力していながら、たとえばボルボのように「全車を電動化する!」と宣言しないのは、なぜだろうか。
ほぼ単独で900万台近いグローバル販売を誇るトヨタ・ブランドにおいて、電動車に一本化するという、過激な物言いはできない。
また、トヨタは、市場が求めるものを、求められる価格で提供するというビジネスを続けてきた。そして、幅広い価格帯のクルマを提供することで、多くのユーザーニーズを満たすことは同社のビジョンともなっている。
つまり、エンジンだけで動くクルマをなくし、価格帯が上昇してしまうハイブリッド一本に絞るという判断はできない。
もし、ユーザーニーズとして「ハイブリッドは不要」という声があれば、それに応えることもトヨタというブランドに求められる役割でもある。もちろん、市販車として求められる様々な環境性能を満たしていることは大前提ではあるが……。