装備過多のフルオプモデルなどが大幅値引きになりやすい
日系ブランドディーラーでは、6月・7月と“夏商戦”が始まる。過去には“夏のボーナス商戦”と銘打っていたものだが、バブル経済後の長期の景気低迷期にボーナス支給を取りやめる企業が続出したり、いまでは年俸制や非正規雇用、フリーランスなど、働き方が多様化してきているので、“夏商戦”と呼ぶようにしている。
夏商戦期間中は日系ブランドが活発な動きを見せているが、輸入車に関しては少々時期をずらして7月メインで、お買い得に購入することが可能となっている。
海外では“モデルイヤー制”というものを採用している。日本車では4年から5年ほどのサイクルでモデルチェンジを行い、その間に新型登場から2年ほど経過したタイミングで“マイナーチェンジ”と呼ばれる改良を実施しているが、輸入車に関しては、モデルチェンジやマイナーチェンジなどのほか、毎年装備の見直しなどの小改良を行っているのである。
北米や中国市場ではとくにこのモデルイヤー制が浸透している。モデルの切り替え時期は、たとえば2018年ならば、10月あたりから“2019年モデル”が早出しされ、販売の中心となっている。
北米市場に限っていえば、近年では9月までに、今年でいえば2018年モデルを完売することができす、大量の在庫を抱えたまま、10月から2019年モデルが本格的に併売となるのが一般的となっている。
モデルイヤーの切り替えのタイミングで全面改良(フルモデルチェンジ)するモデルについては、6月ごろから9月ごろにかけてメディア向け試乗会が開催され、各メディアで報道されるし、そのほかの小改良モデルについても順次改良内容が発表されるので、2018年モデルと2019年モデルを比較しながら購入検討することもできるのだ。
車種によっては8月ぐらいから次年モデルが店頭に並びだし、9月は“エンドセール”として、今年なら2018年モデルが大幅ディスカウントで販売されることになる。“このセールは10月1日午前0時まで”などという刺激的なキャッチも並び、この時期の週末のディーラーは新車購入検討客でかなりにぎわっている。
海外でこのようなモデルイヤー制度があるので、日本に輸入される輸入車もこのモデルイヤー制度に従って、大きな変更がなくとも毎年なんらかの改良が一般的に行われている。ただ、日本における輸入車販売市場は、販売台数がかなり限定的となるので、イヤー変更(毎年の小改良)を行わないケースもある。
モデルイヤーの切り替えはだいたい9月が目安となっており、そのため7月は今年ならば2018年モデルの在庫処分が活気づくのである。ただ個々のモデルの“モデルレンジ(現行モデル登場から何年経過しているとか、フルモデルチェンジ実施予定など)”の違いにより、新イヤーのモデル導入月は異なってくるが、秋ぐらいには多くのモデルについて、新たなイヤーのモデルが日本に陸揚げされて出そろうことになるので、それまでに在庫を処分しておきたいということで7月あたりをピークにセールが行われている。
なお次年イヤーモデルの実車は各ブランド、各車種によって日本向けの出荷にバラつきがあるので、取り扱いディーラーで状況を確認したほうがよいだろう。
輸入車の場合は、“受注生産モデル”のように、契約が決まってはじめて工場へオーダーをかけるモデル以外は、日本法人から「日本市場ではこれが売れ筋だから」などの理由から、日本法人がヘッドクォーター(本社)へ正式なオーダーをかけることができないとのこと。
あくまで“リクエスト”としては聞き入れてもらえるようだが、たとえば完成車を専用運搬船に日本市場向けに積載される車両は、あくまで“割り当て”として出荷されるので、日本で人気のある仕様(ボディカラーやオプションなど)のものもあるが、逆に日本では売りにくい仕様や、オプション過多のようなモデルも含まれているのである。
日本で好まれる車種のなかでも、より好まれる仕様は日本への洋上輸送中に“買い手”が決まってしまうという話も聞いたことがある。
輸入車についてはこのような流れで日本への陸揚げが繰り返されるので、売りにくい仕様は当然在庫になりやすく、船便には毎回そのようなモデルは含まれているので、早めに売りさばく必要もあり、このようなモデルは値引き条件もかなり良くなっているのである。
7月あたりの在庫セールも主役は、売れ筋から少々はずれた在庫車が対象となる。極端に装備の貧弱なベーシック仕様や、逆にフルオプションで価格が高すぎるモデルなど、両極端な仕様も目立ち、ボディカラーも「ドイツ車だからメタリックでしょ」と考えても、人気色でしかも有償(オプション)なため選択するのはかなり難しいので、希望仕様を妥協しながらも、より高い満足感を得られる在庫を探して、より買い得な条件にて購入するかがこの時期の上手な買い方となる。
装備過多で売りにくいなどといったケースでは、当然ながら値引きをアップさせないと、なかなか売りさばくことはできない。そのため値引額も50〜60万円ぐらいは当たり前のように提示されるケースも珍しくなく、もともと高額なモデルにいたっては7ケタ(100万円単位)の値引きもそんなに珍しくないという話も聞いたことがある。
ただ気をつけたいのが、日本車でも同じ傾向なのだが、認定中古車や登録済み未使用中古車が増えていること。認定中古車のなかには、ディーラー名義などで初度登録して、代車や試乗車などとして短期間使用したあと、認定中古車として並べられる車両が目立つし、未使用の在庫車をディーラー名義などで初度登録を行い、未使用のまま中古車として並べられるケースが、より多く販売するモデルほど目立っている。
日本における輸入車販売はここのところ好調が続いている。海外ブランドの特徴は、少々大げさな表現となるが、たとえ大きな自然災害や、リーマンショックのようなものの発生などにより、消費動向を大きく鈍化させることになっても、新車販売目標台数の設定を絶えず“前年比増”に設定してくることが目立つ点。
つまり、販売好調の続く今では、モデルによっては供給過多気味ともいっていい台数が日本に割り当てられているようなのだ。そのため7月の在庫セールを待たずに、ナンバープレートをつけて中古車として流通させようとする動きが活発化しているのである。そのため純粋な在庫車のラインアップで欲しいと思えるモデルが以前より少なくなっていることは十分考えられる(それでも売れ筋は在庫車として残ってしまうようだ)。
今まででも、買い得感の高いモデルは“争奪戦”となっていたので、より商談スピードの速さが要求されるのは間違いないだろう。在庫車だけでなく、認定中古車や登録済み未使用中古車も購入対象に見据え、より多面的に賢い購入ができるように判断してもらいたい。
また新たに輸入車される次年モデルも並行して商談できるならば、購入検討を進めてより買い得かどうかの判断材料にしてもらいたい。ケースによっては在庫車と大差のない値引きになることもあるようだ。