日本ではシビアコンディションにあたる使用条件が多い
ダウンサイジングターボが全盛だ。過給することでエンジンに求められるパフォーマンスを維持しながら、排気量や気筒数を減らすことで軽量コンパクトにするというアイディアは、ドイツ車から始まったトレンドだが、いまや国産車にも広がっている。
最近のニューモデルでも、スズキ・クロスビーや三菱エクリプスクロスのパワーユニットは、いわゆるダウンサイジングターボに分類できる。そのほか、ホンダ・ステップワゴンやシビックの1.5リッターターボも、ダウンサイジングターボといえるだろう。ターボというのは排気エネルギーによってコンプレッサーを作動させるために、エネルギー回収の面からも効率的。
さらに気筒数を減らせればフリクションも低減しやすく、エンジンが軽くなればパッケージングや燃費の面からも有利。そうした部分も含めてダウンサイジングターボは、効率的なパワートレインということになっている。
その一方で、ターボエンジンはNA(自然吸気)エンジンに対して、エンジンオイルの交換サイクルが短めの傾向にある。
国産メーカーで見ると、かつてのように3000~5000kmでの交換が推奨されているほどではないが、NAエンジンが概ね1.5万kmごとの交換が推奨されているのに対して、ターボエンジンは1万km程度での交換が推奨となっていることが多い。とはいえ、いずれにしても1年ごとの交換が標準的なサイクルとなっており、平均的な年間走行距離のドライバーにとっては、ほぼ同じペースで交換することになるだろう。
なお、ダウンサイジングターボを広めたメーカーといえるフォルクスワーゲンにおいては、2年もしくは3万kmが推奨の交換サイクルとなっている。けっしてターボエンジンだからといって短いサイクルで交換することをメーカー自体は推奨していない。そこにはオイル交換によって発生する廃油による環境負荷を減らすという大義名分もある。オイルが燃焼することによる消耗は、オイルを継ぎ足すことで対応するという考え方だ。
そもそも、エンジンオイルの劣化は熱による部分が大きいが、空気に触れることによる酸化、さらに燃料希釈(ガソリンや軽油が混ざって粘度を落としてしまうこと)なども見逃せない要因だ。そのために定期的な交換が必要になるわけだが、とくに最近のエンジンにおいてさまざまな工夫から燃料希釈の度合いが減ってきたことがオイル交換サイクルを伸ばすのに貢献している。
しかしながら、メーカーの推奨するオイル交換サイクルが伸びているからといって、エンジンオイルのノーチェックはNGだ。とくにシビアコンディションでの走行が多いケースでは、推奨よりも短いサイクルで交換したい。2年ごとの交換を謳っているフォルクスワーゲンであっても、『1回あたりの走行距離が8km以下の運転や、渋滞走行、山道や雪道など、エンジンに負荷がかかる運転の多い場合には、とくに定期的なオイル交換をおすすめします』としている。シビアコンディションとは、荒野や砂漠を走るということではない。まさに日本の都市部でよくある走らせ方がシビアな使い方なのだ。
そうした“よくある”シビアコンディションにおいて、エンジンオイルの交換サイクルは短くなってしまう。おおむね推奨サイクルの半分となるから、国産系ターボエンジンでは5000km・半年ごとの交換が必要となってくるわけだ。おそらく現実的には、こうしたシビアコンディション向けのサイクルでオイル交換をすることになるオーナーが少なくないだろう。
ちなみに、ディーゼルエンジンではDPF再生時に燃料を使うため、その影響でオイルの燃料希釈が進みやすい。前述したシビアコンディションで使用しているならば、こまめにオイル量をチェックすべきだ。その場合、気を付けたいのは燃料希釈によりオイル量が増えているケースがあること。オイル量の増加は、すなわちオイルが薄まって適正な粘度を維持できていないと考えられ、早めのオイル交換が必要というサインになる。