3列目シートが補助席じゃないクルマも増えてきた!
ミニバンは3列目席があるから意味がある。しかし、どのミニバンでも快適に3列目席でくつろげるとは限らない。
とかく、格納などの要件によって形状、クッション性が犠牲になりがちな3列目だが、快適度を決定づけるポイントはふたつ。まずは、フロアからシート座面までの高さが十分にあるか? 専門的にはヒール段差というのだが、これが小さい(フロアに対して低い)と体育座り的な着座姿勢になり、体形によってはシート座面に太股裏が密着せず、お尻だけで体重を支えるような姿勢になり、落ち着かなくて疲れやすくなりがちだ。
次はホールド性。これがよくないと、ブレーキを踏まれたときにお尻がズリズリと前に動いてしまい、これまた落ち着かない着座姿勢になってしまう。同時に、カーブなどでもアシストグリップにつかまらないと姿勢を維持できず、やはり疲れやすい。長時間のドライブなど御免被りたくなるわけだ。お尻のホールド性はシート形状、クッションの沈み込み度合いに加え、シート地の滑りやすさ、滑りにくさにも影響されるのだ。
もちろん、3列目席居住空間のゆとり、シートバックの高さ、ヘッドレストの形状、フロアの形状、カップホルダーなどの有無なども重要だが、ここでは「3列目席のかけ心地に優れる」各クラスの1台を紹介したい。
まずは、そもそも3列目席の居心地、かけ心地に有利なLLクラスでは、ご想像のとおり、トヨタ・アルファード&ヴェルファイアを挙げたい。
たっぷりとしたシートサイズ、ヒール段差、クッションの厚み感、お尻の落ち着き感、そして走行中の振動の少なさなどでクラスベスト。2列目エグゼクティブラウンジシート仕様では「秘書席」と呼ばれる3列目席ながら、そんな“秘書”も快適に移動できる!? 3列目席なのである。
Mクラスではホンダ・ステップワゴンだ。3列目席の格納方式はクラス唯一の床下格納で、フラットフロア、シートのスライド機構、シートの重量、重心の高さなどが原因で発生しやすいビリビリしたシート振動がほとんど感じられず、シートそのもののかけ心地の上質な快適感と広々感(2列目キャプテンシートの場合)が見事。
日産セレナは荒れた路面で乗り心地が急変。シート地はお尻が滑りやすく(シート地による)、足もとが意外に窮屈なのが惜しい。トヨタ・ヴォクシー&ノアは良路ならトヨタ一流の上質でゆったりした高級セダン的乗り心地を示すものの、路面が荒れると途端にビリビリした振動がフロア、シートに伝わりがち。
Sクラスではシエンタがいい。そもそもコンパクトなサイズにして3列目席の乗降性がよく考えられていて、フロアからシートの高さ(ヒール段差)はフリードより約7cmも高くしっかり自然に座れ、クッション性もよく想定外に快適なのである。2列目席優先ならフリードのキャプテンシートだが、3列目席の居心地、かけ心地にこだわるならシエンタだろう。
ちなみに3列目席の居心地、前方見通し視界の良さ、乗り降りのしやすさでは2列目席がキャプテンシートのほうが圧倒的に優位。前2席の間にスルー空間があるため、車内移動、2列目席ウォークイン操作に頼らない乗り降りのしやすさ、前方に開けた視界(窮屈感が低減)、車体内側の足の置き場(足を伸ばしやすい)などにメリットがある。2列目席がベンチシートだと、その背もたれが壁のように感じられ、圧迫感が出てくるわけだ。