基本的にはハイグリップタイヤほど柔らかいゴムを使っている
タイヤのグリップ力と耐摩耗性は、基本的に反比例する。簡単にいえばグリップ力の高いタイヤほど柔らかいゴムを使っていて、柔らかいゴムほど減りが早い。F1用のタイヤでいえば、2018年は7種類のドライタイヤが用意されている。
もっとも柔らかいのが、ハイパーソフト(桃)で、ウルトラソフト(紫)、スーパーソフト(赤)の順になっているが、この3つはいずれも作動温度領域が低く(タイヤが温まりやすい)、グリップ力は高いが、タイヤライフは柔らかい順に短いので、決勝用タイヤにはあまり向いていない。
もっとも出番の多いソフト(黄)は、そこそこの柔らかさで、ライフもそこそこ(作動温度領域は高い)。あとは、ミディアム、ハード、スーパーハードの順にゴムが固くなり、熱に強くタイヤライフも長い(作動温度領域はハードのみ低く、あとの2種類は高い)という特徴がある。
市販用のタイヤでも事情は同じで、たとえばブリヂストンのホームページを見ると、製品ごとの特長がグラフで表示されている。これを見ると、グリップ性能に特化したポテンザRE-71Rのライフ性能は、5段階中「2」。
それがエコタイヤで、同じブリヂストンの低燃費ベーシックタイヤ「ネクストリー」よりも摩耗寿命(指数)を30%も向上させたという「エコピアNH100」だと、ライフ性能は、5段階中「5」になっている。
額面通りに受け取ると、エコピアNH100は、ポテンザRE-71Rよりも2倍以上摩耗しにくいということになるが……。
この点について、ブリヂストンに確認すると「ライフ性能のグラフは、あくまでイメージです。実際に5段階中『2』のポテンザが、5段階中『5』のエコピアより、2倍以上摩耗が早いということはありません。正確なデータは手元にありませんが、一般道での普通のご利用でしたら、エコピアの70%ぐらいのライフ性能ではないでしょうか。『高性能で、長寿命』になるよう、研究開発も進めていますが、基本的にハイグリップタイヤほど減りが早い傾向があるのは事実です」とのことだった。
高性能タイヤ、ハイグリップタイヤは高価で、しかも減りが早いというのはデメリットかもしれないが、逆にいえば、安全性能をお金で買えるのがタイヤだと考えてほしい。したがって、やはりタイヤだけはケチケチせずに、車種やクルマの性能にマッチした、“いいタイヤ”を装着するようにしよう。