乗り心地も確保しているというエアレスタイヤは来年発売予定
日本最大級のトラックイベント「ジャパントラックショー」が、5月10日から12日までパシフィコ横浜で行われた。トラック関連メーカー129社が出展したなかで、注目ブースのひとつがミシュラン。展示された商品を紹介していこう。
国内で走っているトラックの多くは、オールシーズンやリプタイヤを装着しているのが普通となっているが、欧州では車軸ごとに適切なトレッドパターンを提供することが主流となっている。今回ミシュランが展示車両に装着していた「X MULTI D」は駆動用タイヤ。駆動軸用タイヤということで、ロングライフ性能と偏摩耗を抑える特性が与えられている。さらに「X MULTI D」なら、トラクションやブレーキの効果も最大限に発揮することが可能だ。
さらにミシュランでは、タイヤプレッシャーモニタリングシステム「IOT」を使って、空気圧やタイヤ内部の温度の管理ができるシステムも出展。タイヤプレッシャーモニタリングシステム自体は、他メーカーからもリリースされ徐々に普及しているが、ミシュランが提供するシステムはデータをクラウド上で管理することが可能。実際のドライバーだけではなく運行管理者や販売店、また何かトラブルがあったときに利用できる「ミシュランレスキューサービス」も異常値を同時に把握できるという画期的なものだ。ちなみに、このシステムはミシュランのみが実用化しているというのだから、いかにすごいのかわかるだろう。
少しでもドライバーに運転に集中してほしいということもあり、このシステムを使って会社が車両の状態を管理することでドライバーの安全も確保でき、荷主に遅配などで迷惑をかけることもなくなる。このシステムは、6月1日(金)から提供開始となる。
そして、低床4軸に装着されていた参考出品のタイヤ「XTA2+ENERGY」は、ダブルタイヤ車両に装着可能な、幅を広げたワイドシングルタイヤ。ミシュランでは、ダブルタイヤをシングルタイヤにすることで、廃棄されるタイヤを削減。そのほか環境負荷低減やメンテナンス省力化など多くのメリットがある。
ミシュラン広報部の石井ミオさんによると「現在、『XTA2』というトレーラー用のタイヤはまだ国内では販売していませんが、やはり低床4軸の車両でもシングル化をして積載量を上げていく、積載効率を高めていくことで、今の運送業界の効率を高めるというニーズに対応していくということ。こういったオファーを日本でも興味を持っていただき、問い合わせをたくさん頂戴しているのですが、実際に見ていただいてお客さまの生の声を聞きたいということで、今回の展示となりました」
そのほかにも、ミシュランのトラックタイヤの特徴を活かした新技術も行った。同じく広報部の石井さんによると「ダブルタイヤよりもワイドシングルタイヤのX Oneは、ホイールと組み合わせても一軸あたり100kmほど軽くなります。軽くなった分、トラックの積載効率が上がります。通常、タイヤは摩耗すると廃棄するだけですがミシュランはケーシング(トレッドの下の部分)の耐久性も非常に高く、溝を掘ってリグルーブすることで溝を復活させることができます。展示しているタイヤを見て頂きたいのですが、右側が摩耗した状態、左側が溝を掘って復活させた後になります」
「溝を掘ることでタイヤの寿命を約25%復活させることができるのですが、そのタイヤも使い切った場合はバフがけをして新しい板上のトレッドを張って加硫することでリトレッドできます。これはまだ参考出品なのですが、3R(リデュース/リユース/リサイクル)ということで、お客さまに経済的に使っていただく提案です。今回は違いをわかりやすくするためにリグルーブ&リトレッドを施した2本のほか、新品を加えた3本を並べさせていただきました」と語ってくれた。
また、来年発売予定のエアレスタイヤは建設機械用だという。タイヤとホイールを一体化構造とし、いわゆるホイールの部分は樹脂で形成。その樹脂がたわんで、障害物をたわみながら乗り越えるような構造になっている。
通常はバイアスタイヤが装着されているが、非常に小さい面積のところを小旋回する建設機械はタイヤの減りが非常に早いという。バイアスタイヤに比べてラジアルタイヤだと寿命は長くなるが、タイヤに空気が入っている以上パンクは防げない。だが、今回展示されたエアレスタイヤは空気が入っていないため、パンク修理の時間も必要なし。サスペンションがない建設機械でも、スポーク部分がたわむことで乗り心地も確保しているという。「アメリカやカナダの市場ではすでに販売しているのですが、日本には来年導入を予定しており、今回参考展示しました」と石井さんは話す。
日本の物流を支えるトラックの足もとを支えるミシュラン。今後の展開に期待したい。