厳しい排ガス規制がディーゼルらしさを奪う! 生き残る道はハイブリッドしかない

今のディーゼルで踏んだ瞬間に立ち上がる大トルクは味わえない

 ディーゼルエンジン搭載車はクーリンディーゼルと呼ばれ、エコカーとしてハイブリッドと同様にエコカー減税100%の対象車になります。ディーゼルというと、機関車トーマスでは意地悪なヒールですが、一般的なイメージとしては力強くて頑丈というイメージでしょうか。それはトラックなどの大型車両に使われているからだけではなく、ガラガラという大きな音も、そういうイメージを強めていたのかもしれません。

 しかし現代のクリーンディーゼルは昔とは違います。昔はアクセルを踏んだ瞬間にドンと音が出るほどトルクが出てきて、力強く加速してくれました。現代のクリーンディーゼルでは、そうした特性は薄れてしまい、ガソリンと変わらないトルク感になっています。古くからのディーゼルファンは、現代のクリーンディーゼルにはちょっと残念な気持ちを持っていると思います。

 それは排出ガス規制をクリアするため、アクセル操作に対して反応を遅らせているので、トルク感が薄く、レスポンスの悪いパワートレインになってしまうのです。専門用語でいえば、応答性が悪い、ピックアップが悪い、というような表現になります。

 本当はアクセル操作に対して、しっかりと応答したいところなんですが、そうすると排出ガスに有害成分が多量に出たり、黒煙が大量に出たりしてしまうんです。燃焼状態が変化するときに燃焼室内の温度が大幅に変化してしまったりするので、そうした状況が起こりやすくなるんです。それを防ぐため、ゆっくりと燃焼状態を変化させる、つまり燃料を一気に増やしたりせずに、少しずつゆっくり増やしていくことになるわけです。ドライバーが応答遅れとして違和感を感じるのは、当然なんです。

 燃費の数値と同じですが、トルクもカタログ値を出すということと実用上の性能は異なります。カタログ値はエンジンを全開で一定回転になるような負荷を与え、エンジンの燃焼を安定させるための時間をかけて計測します。

 ところが実用上では一瞬一瞬なんですね。その一瞬をドライバーが感じながら運転しているのです。そしてあらゆるクルマにとって、トルク感というのはもっとも重要なパワートレインの性能であり、クルマの質を決定付ける要素のひとつなんですね。最近はケチッた性能のエンジンが増えてきたので、どうもそのあたりの「質」を忘れがちですが、たとえば高級車が大排気量になるのは、トルクが滑らかにスッと出てくる上質さが、クルマの性格にマッチしているからです。

 以前低回転でのトルクがしっかり出ていないエンジンでは実燃費が良くならない、という原稿を書きました。そういう意味ではディーゼルエンジンも、燃費が厳しいといえるでしょう。もちろん、ガソリンに対して元々熱量が大きく、熱効率も高いので、ガソリンエンジンに対して単純に比較すれば、燃費は優れていますね。しかしディーゼルエンジン本来のポテンシャルを生かせていると言えるのでしょうか?

 ピックアップの悪さと実燃費の改善のためには、やっぱりモーターの力を借りるのが一番でしょう。ディーゼル・ハイブリッドですね。ディーゼルエンジンは基本的に熱効率は良いので、不利な加速時と低回転時だけをアシストするだけで十分ですね。

 というわけでマイルドハイブリッド型がベターで、トヨタのTHSやホンダのi-MMDのようなシリーズハイブリッド的な構造は、エンジンの振動やノイズが大きいので難しいでしょうね。シリーズハイブリッドではエンジンは熱効率が最大になるように常に全開近くで回るので、ディーゼルエンジンではクルマとして見ると快適性が悪化してしまいます。

 ただし、そもそも高価なディーゼルエンジンに、マイルドハイブリッドとはいえモーター+バッテリーを与えると、かなり高価になってしまいますね。ドライバビリティは改善するし、ドライバーは運転していて楽しくなると思いますが、相当高くなるでしょう。ハイブリッド分だけでなく、ディーゼルゆえの防音・防振対策もあり、重さも結構増えると思います。

 排出ガス規制は厳しくなる一方で、ディーゼルエンジンはそのたびに燃費を少しずつ悪化させているのが現実です。そういう意味で、ハイブリッド化が将来像のひとつになるのは間違いありません。ただトータルコストでシンプルなガソリンエンジン車に及ばない中で、それが商品価値を持つかどうか? どういった評価を受けることになるのか? 興味深いですね。


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